3Z置き場

□あなたが私の心を盗むなら…
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「先生…風邪引くぜ?」





後ろを振り返り見上げると土方が居た




「お前らが…一生懸命作った応団幕がダメに……なっちまった」

「…………」

「走って出て来たけど間に合わなかったよ……」

「…………」




土方は静かに銀八の話を聞く



「俺ァ……教師失格だよ‥生徒が大切に作り上げたモノさえろくに守れないんだ………








ごめんな?土方…」






思えばこの漆黒の髪を持つ生徒を本名で呼んだのは今が初めてかもしれない






最悪だ…



こんな風に呼びたくなかった





情けない





そんな自分が情けなくて俺は応団幕を抱き締めながら蹲った




「先生……」



土方は銀八の前に回り込み屈むと優しく濡れた銀八を抱き締めた




「先生だよ……お前はちゃんとした先生だよ‥俺が保証する」



いつも言い合いしてる時の声色とは全く違う優しい声色に既に流れていた涙は滝の様に勢いが増した





好き…






好き……




好きだ…
土方が好きだ







自分にこんな嵐があると思わなかった




抑えられない




土方が好き過ぎて抑えられない





この気持ちを伝えるのが怖くて





土方の未来を俺の言動で奪ってしまうかもしれない事が怖くて





俺の思いで土方を縛るのは嫌だから





先生らしく




生徒の未来を見据えて俺は自分の中の嵐を必死に抑える事を選んだ





「…震えてる‥寒いのか?」




己の腕の中で小刻みに震える銀八を気遣う


「大丈夫…俺は、大丈夫だからもう構わなくていいから」




もう、俺には構わないでくれ





嵐が抑えられなくなる






「大丈夫な訳あるかよ……苦しそうなツラしやがって」



そう言うと土方は銀八を抱き締める腕に力を込めた



「放せっ!!俺、濡れてんだぞ!?」

「別に構わない」

「俺……汚れてんだぞ??」

「別に気にしねェ」

「俺が気にすんだよ!!もう、放せ!!」
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