3Z置き場

□全国大会-さらば碧き面影-
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蝉の声が響く時期、高校球児が一年で最も盛り上がるイベントがある。
それは甲子園大会。





全国から集まった高校の中から全国の一番が決定する。
野球部に入部すれば誰もが夢を見るそれが甲子園大会だ。
銀魂高校野球部もそれは勿論同じ事。
猛暑と言えどもグランドに響く軽快な金属音、金属音と共に上がる歓声は何時もと変わらない。
そんなグランドから聞こえてくる音に耳を傾けながら銀八は先日の出来事を思い出していた。












--銀魂高校三年Z組の教師である坂田銀八は、突然クラスの生徒である一人の男に【放課後グランドで待っていてくれ】と呼び出されていた。



銀八は呼び出し主の担任ではあるが彼の部活動の顧問でも無く何故自分が部活動後に呼び出されグランドにいるのかと溜息を吐いた。

今は部活動の終えたグランドに銀八一人が不自然に残っている状態だ。


この寂しい状況に彼は多少苛々を募らせていた。






「白衣着たグランドとは全くもって釣り合わない奴がココに居るっておかしくね?……もう帰ろっかな…」

「いや待て」

「待てじゃねェよ。お前どんだけ人を待たすんだコラ。そしてどんだけ俺に恥ずかしい思いさせんだよ」





公舎の時計を見れば銀八が待ち始めてから調度30分が経過していた。
コレが少し涼しくなった夕方だからまだ我慢出来るが真昼の暑い時にやられたらものなら絶対に拳の一つや二つや三つ飛ばしたに違いないだろうなと銀八は思った。





「でっ?用って何?」



貯まりに貯めてしまった仕事を早く片付けたい銀八は急かすように彼へ訪ねる。
だが、何時もならハッキリと暴言を吐いてくる彼が今は顔を赤らめてモジモジしている。



「土方…先生忙しいんだけど何かあるなら早く言ってくれ」

「………あの…俺、俺」

「お前そんなどもるキャラじゃないでしょーが?口で言えないんならこの際ジェスチャーでも何でもいいから伝えてくれ……まあ、取り敢えず【早く言えや】」

「……結局口で伝えろって言ってんじゃねえかあああ!!」





グランドに響き渡る彼の声は大きく流石野球部のキャプテンなだけはある。
どうやら彼…土方も力いっぱい叫んだお陰で緊張がほぐれたらしく銀八の目を見つめて何かを言う決心がついたようだ。



「先生俺はアンタを甲子園に連れていきたい」


余りにサラリと流れた言葉。
どこぞの青春ラブコメに使われていそうな言葉を言った土方は澄んだ瞳で銀八を見つめたままだ。




「俺、野球部の顧問じゃねェんだけど」



甲子園に連れていきたいと言われた所で銀八は野球部の顧問では無い。




野球部の顧問ですら甲子園に行けるのはほんの一握りの人間だと言うのに。





「んなこたァ分かってる。俺はアンタに晴れ舞台を一番間近で見ててもらいたいんだ」

「晴れ舞台ってまだ地区予選も始まってねーだろうが」

「アンタが見守ってくれさえすりゃあ地区予選突破して絶対に甲子園へ行ける……俺は銀八、あんたが好きだ」









若さと言うのは素晴らしいものだ。
なんの恐れも無く思ったままを伝えられる。
彼、土方は男同士の恋愛に何の恐れも無いのか軽々と銀八に気持ちを伝えてみせる。
真っ直ぐな瞳と同様に彼の心も言葉も真っ直ぐだ。






「うん。知ってたよ」

「だったら話が早ェ俺と付き合え」

「断る」


土方の告白と銀八の返事の間僅か二秒。
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