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□それはホントの愛だった
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最初はただの、遊びのつもりだった気がする。
「…幸村。」
「何でござるか?」
真上にある幸村の顔を見つめながら、小さくそう呼びかけると、彼は軽く首を傾けてそれに応えた。
ひぐらしの鳴き声が響き渡る日曜日、うららかとはお世辞にも言えない暑さにも関わらず、扇風機のみでクーラーもつけていない夕刻の俺の部屋。
幸村に押し倒された弾みに手から零れ落ちたスティックタイプのアイスキャンディーが、溶けてベッドの上にしみを作っていくのを目の端に捉える。
あーあ。
一体誰が掃除すると思ってんのかね、コイツは。
「政宗殿?」
呼びかけたっきり、黙りこくった俺を不審に思ってか、幸村が顔を覗き込んできた。
真っ直ぐで綺麗なトパーズの瞳に、俺は映る資格を持つのかとボンヤリ考え、直ぐ打ち消す。
「…Ah、何でもねえよ。」
「ふぅん?」
明らかに納得していないという風情と声音でそう言って、幸村は、近づいていた顔を再び元の位置に戻した。
それから、無言のまま俺に跨り、制服のボタンを一つ一つそれはもう丁寧に外し始める。
少しだけ楽しそうな幸村の顔から目を背け、されるがままに片方しかない目を閉じて、ふと思い出した。
そういえばコイツは、SEXの時、相手の服のボタンを外すという行為にえらくこだわるのだ。
何でも、その段階に生じる相手を征服した感覚、これがたまらないらしい。
何だソレと笑った反面、いい加減コイツも変態なんだなと思ったのを覚えている。
も、っていうのは、そうやって変態な部分暴露されて、それでもやっぱり幸村が好きと思える自分に気がついたからで。
以前の俺なら即刻殴ってハイサヨナラかもしれないのに。
ああやってヘラリと笑えてしまえたのだから、やっぱり俺は変態だ。
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