S-Story
□エンドレスタイム
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Side ヒロキ
マコトと顔をあわせないまま3日が過ぎた。
普段だったら、何も気にしない期間。
しかし、最後に見たマコトの顔と残されたカギがどうしても俺にいやな予感を与える。
「――ヒロキさん仕事に集中して下さいよ!」
さっぱり動かないパソコンのカーソルに、隣に座っている後輩が俺に注意をする。俺は何とか意識を仕事に向け、パソコンに向かうが意識はすぐにそれてしまう。
考える相手は、たった一人……。
遠慮がちに笑う、年下の彼だ。
マコトはいつも、どこか悲しげな瞳で俺を見つめていた。
けれど、いつも楽しげに笑って俺の傍で、俺の声に耳を傾けてくれた。
俺が大学生のときはそんなことをしていただろうか?
誰かの言葉に耳を傾け、その悩みに親身になって考えることなんてしていただろうか?
子どもというには成熟しすぎて、大人というには純粋すぎるマコトくらいの年齢の子たちと交流することなんて、社会人になってからなくて……そういう人種が集まるバーで話しかけられたときはただただ驚いた。
けれど、顔を合わせ何度か話していくうちに彼の醸し出す雰囲気が優しく俺を包んでくれることを心地よく感じていた。
だからだろうか……マコトが、身体の関係をほのめかしてきたとき、何を言っているか解らなかった。それが何を表すのか、どういったことになるのか解らないまま、彼に促され身体をつなげた。
そして、そのまま……おれの傍に居てくれるようになった、マコト。
それがあまりに自然すぎて、俺はそのままカギを彼に渡した。
そうすることが、あまりに自然で当然のことのように感じたからだ。
そのカギが、3日前家のテーブルの上にあった。
最初は、マコトが忘れていったのではないかと思った。何かの間違いではないかとも思った。
だが、マコトは俺の家のカギをキーケースに入れていた。このカギだけがあることは……。
そう思うと落ち着かない気持ちになった。
「……ヒロキ…大丈夫か?」
また、集中を欠いている俺に動機のマサキが心配そうに話しかけてくる。
そのまっすぐな瞳が好きだったなぁ、とぼんやり思った。