S-Story
□タイムリミット
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「――寂しい者同士、慰め会いませんか、ヒロキさん?」
稚拙な言葉。
大した誘い文句だと、今の俺ならせせら笑う。
だけど、その時の俺は必死だった。
この瞬間を逃してしまえば、一生いいオトモダチという不毛な関係でしかない、と思い詰めるくらい必死だった。
だから、それを後悔なんかしない。
ただ――思っていたより終わりが早かっただけ。
たった、それだけだ。
タイムリミット
袋に詰めた生ゴミをゴミ箱に捨てた。
中身はほぼ料理の形を残していて、手もつけられていない。
だけど、捨てる。
だって、食べる人がいないんだから。
「……もったいねぇ…」
つい、ぽつりと呟いてしまうが、俺自身の食欲もふるわないのだからどうしようもない。
かさり、と乾いた音がして、俺はごみのフタを閉めた。
『――マコト、勿体無いことをするんじゃないよ』
普段穏やかなヒロキさんが、少し咎めるように俺を叱る姿が目に浮かぶ。
けれど、いつもなら、叱ってくれりはずの貴方は今ここにいない。
俺は、ヒロキさんの家に本人不在でたった一人でいる。
何故ヒロキさんの家にいるのかといったら、彼を待っているからで…。
けれど、20歳になったばかりの大学生の俺が、27歳のサラリーマンのヒロキさんを待っている理由を考えると変だと思う。
大学の先輩後輩とか、明らかに分かりやすい関係だったらよかったのに。
俺たちの関係は、バーで偶然何度か出会って、話して、少しだけ連絡をとった末に、うまくカラダの関係を持てた、という何ともフシダラな関係だ。
あぁ、でもヒロキさんは何も悪くない。
悪いのは、全部俺。
好きな人にフラれて、弱っているヒロキさんに上手く取り入った。
ズル賢い俺が全て悪いんだ。
だから、罰があたった。