S-Story
□ファイアウォール
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パタン、と携帯電話のフラップが閉じる乾いた音が部屋に響き、浮竹がソファから体を起こした気配がした。
「――困ったら、いつでも相談して。僕は千尋の味方だから。今は言いにくいかもしれないだろうけど……」
「――浮竹……」
夕日に照らされた浮竹の表情は、とても真剣で俺のことを本気で心配してくれていることがわかった。それが、面映い。
「……待ってるから」
そういって、浮竹は踵を返し、生徒会室から出て行った。
ぱたん、と扉が閉まる音が耳に残る。まるで、俺の今の気持ちを増長させるかのように。
「……ありがとう」
自然とこぼれた言葉。
それは、小さな背中に届くことはなく、オレンジ色に染まる部屋の中に薄くなって、ふうわりと消えた。