S-Story
□ファイアウォール
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男の俺に男のファンクラブがついても……素直に喜べない。
それは無理もない感覚ではないだろうか。
「ま――とりあえず、中身を確認してみますか」
俺は深々とため息を吐きつつ、白い封筒の封を開ける。
ピリピリと紙を破る音が響く中、祐希と浮竹が俺の手元を興味深くのぞいてくる。
実は背後の龍大もその手紙が何なのかを見極めようと、視線を鋭くしていたことには気が付かなかった。
白い封筒の中から現れたのは、キレイに四つ折にされたこれまた白い便箋。薄い紙が透けて、そこに書かかれた文字の数をうかがい知れる。
その文字数に多少怖気づきながらも、そのようなそぶりは一切見せずにその文字に目を走らせる。
『初めまして。副会長というお仕事柄、お忙しいとは存知あげますが、どうしてもこの気持ちをお伝えしたく思いお手紙差し上げました。先日の生徒会会議での千尋様のお話はとても感動いたしました。いつにも増して…』
「……」
「随分と情熱的な文章のヒトだねぇ…」
すいっと隣に現れ、書面をのぞきに来た浮竹が飽きれたように感想を述べる。
その意見はもっともすぎていた。
丁寧な文面にもかかわらず、俺の会議での細かな仕草や日常の行動について観察しているのではないのかと思ってしまうほど詳細に書かれていた。
その観察の最後には、やれ『千尋様は素敵だ』『美しい』などと言葉が続いている。
「……オチも結論もない。詰まらん文章だな」
俺は嫌悪感も隠さずその手紙を元の通りにたたみむと、白い封筒に入れた。
「あはは、副会長ひどい〜」
浮竹の笑い声が重く俺の胸に響く。