+α

□chocolate snow
1ページ/1ページ

chocolate snow





ベランダに出て息を吐いた。



白い吐息が夜の闇へ溶けていく…。



今日。皆は想いを届けたんやろか?



…届かない想いは?



どこにいくんやろ…?



可愛くラッピングされたチョコを握り締め、そんな事を考えた。



「あ…。やけに冷えると思てたら…」



ヒラヒラと舞い降りる雪にそっと手を伸ばすと

雪は優しく溶けてなくなって、少し切なくなった。



…消えてもた。



そっちも雪降ってんのかな?



あんな雪みたいに無垢な子が相手やもん…



…ずるいわ。



本気で王子様やと思ってたんやで…?



あの子を想うあなたを想うと、正直まだ胸が痛むねん…。



いつになったらなくなってくれる?



この雪みたいになくなってくれたらいいのに…。



消えてなくなったらええのに………あほ。



「あーもう!消えてなくなってまえ!」



アーンと大きく口を開けて空に顔を向けると、雪は口の中で溶けて

冷たい感覚を夢中で追いかける背後から、お兄ィの声が聞こえた。



「あ?お前何しとんねん?」

「雪食べてんの!」

「アホか。んなモン食わんと飯するで?」

「ほっといて!ウチは雪が食べたいねん!」

「…お前なぁ。ほんまにアホやろ?」



えぇ!えぇ!どーせ!ウチはアホですよっ!!!!



ヤケクソみたいにパクパクと口を動かしてたら、お兄ィは突然ウチの口になにかを放り込んだ。



「むふっ!なんやのん?!」



そう言った口の中には、カカオの香りが広がっていく…。



「…誰にもろたん?」

「誰でもええやろ?」

「…まぁええけど」

「聞きたいか?」

「べっ、べつに!…なにニヤニヤ笑ってんねん!」

「べつに〜?ただの義理チョコやで?」

「あーそう!可哀想に」



あぁ。ウチって可愛ないなぁ…



あの子みたいに素直で優しい可愛い子やったら…きっと…。



ウチもこの白い雪みたく変えてくれへんかな…。



「…可愛かった?」

「あ?誰が?」

「チョコくれた子」



ウチが聞くとなぜかお兄ィは爆笑した。



「なに笑っとんの?!」

「いや。可愛かったんちゃう?昔は」

「は?」

「それくれたん、取引先のおばちゃんやで?」

「…おばちゃんなん?」

「あぁ。もうすぐ、おばあちゃんやな?」



マジマジとお兄ィの顔を見てると、なんや可笑しなってきて二人で笑った。



「お前が持っとんのは俺へのプレゼントか?」

「んなワケないやん?アホちゃう?なんでお兄ィに上げなアカンの?」

「ほな誰に用意してん?」

「だっ、誰でもないわ!自分専用や!マイチョコやの!」

「ほぉか?せやったら俺にも分けろや」



………。



今年は変なバレンタインや。



「…ん」

「ん。………チョコのクセに甘ないなぁ?」



雪と一緒にお兄ィとチョコを食べた。



行く宛てのないチョコなんか買う気なんてなかった。



せやのに…どれにするか真剣に迷ったんや。



で、結局選んだのはほろ苦いビターチョコやった。



だって甘くないんやもん。



きっと甘い甘いチョコはあの子がくれる。



だから絶対幸せになってな?



ウチはあんたに恋した事、後悔なんてせぇへんけど



あんたはウチをフった事、後悔する日がくるかも?やで♪






fin
2011.2.14



サプライズ☆27回目

この甘い時期に甘くない千鶴ちゃんと平良さんでした



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ