BASARA話 2
□今月今夜
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「誰だろう。」
ご近所さんは皆来たし、来れないお家にはお届けしたし・・・
磨りガラス越しでは誰だか分からず、それでも客を持て成す用意をしようとまた部屋に戻れば、これに気付いた幸村も口に入れていたおはぎを急いで飲み込んだ。
カラカラカラ・・・
ガラスの引き戸が静かに開かれ、入って来たのは大柄の男と男の子。
「道祖神・・・・というのは、ここで宜しいか。」
「は、はいっ。」
町の人ではない、初めて見る人たち。
真っ黒なスーツをきっちり着ていて、眼光鋭く、頬に傷。
子供の方は上質なコートを羽織り、右目は前髪に隠れているが、どうやら眼帯をしているようだ。
「いらっしゃいませ。・・・どうぞ。」
そういって、佐助は甘茶を出せば、どうも、と言って、男は頭を下げた。
話を聞けば仙台から来たようで、旅館の女将から今日の事を聞き、足を運んだのだという。
「ねぇ、君。名前なんていうの?」
「・・・伊達、政宗。」
視線は下に向けたまま、ぽつりと静かに言った。
「政宗君。お父さんと、どこ行ってきたの?」
スキーかな?と、尋ねてみれば、
「小十郎は、父さんじゃない。」
またもやぽつりと呟いて。
私は守役でして、と、その横で申し訳なさそうに苦笑する男が目に入った。
「ごめんね、変なこと言っちゃって。ちょっと待っててね。今、お札用意するから。・・・だーんなー!」
少し気まずい雰囲気を変える様に佐助は幸村に声をかけ、そして、
「寒いでしょ?中に入りなよ。」
と、室内に入ることを勧めた。
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