BASARA話 2

□上田の地にて思うこと 佐助ver
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【転生現代パロディ主従de遠距離恋愛】
Side 佐助

あと少しで今年も終わる。
上田城、東櫓を潜り、神社へと続く参道を真田の旦那と一緒に歩く。

「うーっ、さっむいねぇ。」

フードに顔を埋めれば、回りに付いたファーがくすぐったかった。

「うむ。お参りが終わったら甘酒を飲んでもいいか。こうも寒くては、次の場所に行くのにも体が動かん。」

「ちょっと、旦那ぁ。今年は車で来てるんだから、寒さ全然関係無いじゃん。」

”車で行こう”と誘ったのは俺の方。
いつもは電車なのだけれど、
「真田の方は、どの様な年越しなのだろうか」
といつも言われれば、
「じゃあ、上田城でお参りして、それから真田の方にも行ってみる?」
そう言わざるをえないじゃないか。
お館様縁の神社は・・すみません初詣に行かせていただきます・・ってね。

前を見れば、まだまだ長い、長蛇の列。

「・・・よかったね。旦那。」

何が、なんて言わなくても旦那は解ってくれるだろう。
こんな小さな神社に沢山の参拝客。
『真田』が忘れられてない証拠。

「ああ。」

そう言って旦那は小さく頷いた。
その横顔が幸せそうで、これを最後に見れた今年はやっぱり幸せだと思った。

「え・・と、今年?まだ、今年?」

急いでスマホを取りだして時間を確認すれば、新年まであと5分。

「よかった。まだ明けてなかった。」

横を見れば、旦那も携帯を弄っている。
きっと独眼竜にメールでもしているのだろうか。

「電話・・しちゃおうかな。」

着信履歴を開けば一番上に小十郎さんの名前がある。
名前を見ただけでニヤけてしまう俺様は、もういろいろ末期症状だ。

「小十郎さんっ!カウントダウン・・5分前!!」

『もう3分前だ。時計を直しとけ。』

挨拶も無しに話始める無作法にも、もう慣れた様子なのが何だか可笑しい。
昔なら、挨拶も無しに部屋に入れば、よく刀を突きつけられたもんだけど。

「えー!まじで?・・えーっと、今年も大変お世話になりました。良いお年をお迎えくださいっ!!」

一気に言って「間に合った?」と問えば「棒読みだけどな」と返された。

「ほんとに!本当に思ってるから!!・・真田の旦那もろとも、大変お世話になりましたってね。」

電話の向こうでは、クスクスと笑い声。
そして「佐助」と名前を呼ばれ

『この一年は・・』

そして唐突に始まった

『お前の事を想った一年だった。』

竜の右目の大告白。

『会おうと思えば会える文明の利器ってやつが、逆に恨めしく思ったりもした。』

「何だよ、意味解んないよ。つまりは会えるのに会えなかったって事?」

『それはっ・・仕事があってだな・・』

400年前と、何にも変わらない”会えない理由”
勿論、昔と今じゃ、何もかもが違うけど。

「嘘っ!わかってる!!俺様だって会いに行けないし。お互いさまじゃん。主と共に、その地に一緒に居ないと気が済まないんでしょ?」

それは俺様だって一緒。

主がこの地に想いを寄せるのと同じように、従者が主を想うのは一緒。
これが従者というものなんだ。

『まぁ・・な。』

済まなそうに言う小十郎さんの言葉にちょっと寂しさを覚えたけれど、それは自分も同じだから。
従者同士だからその気持ちは一番わかるし、昔も今も、そこに惹かれ合ったんだ。

その時お囃子の音と共に周囲では”おめでとう”の声が響く。

「あけましておめでとう!小十郎さん。」

「お、年が開けたか?」

”去年”がどうであろうと、今年がどうなろうと、こうやって年の移り変わりのこの時に、小十郎さんの声を聞けたことを嬉しく思う 。

『おめでとう。今年もよろしくな。』

「うん。あと・・悔しいけど、独眼竜にもおめでとうって伝えて。あと旦那の事よろしくって・・。」

『ああ。わかった。』

気付けば、俺達が最前列となっていて、

「また、連絡するね。」

そして静かに電話を切れば、隣から聞こえてきた

「・・佐助の事を、お頼み申す・・」

(旦那・・?)

電話を切ったその顔は、凛として、またこれで一つ大人になったのだと感じさせられた表情だった。

(まったく・・俺様の事より自分の心配しなさいよ。)

大鈴に触れた主のその手の上に、恐れ多くも忍風情が手を添えて。

ガラガラと大鈴を鳴らし、願いを呟く。

(真田の旦那が怪我もなくこの一年を過ごせますように。昌幸様、どうぞお守り下さい。)

「それと・・」

(小十郎さんが健やかに過ごせますように・・ついでに独眼竜も。)

最後に一つお辞儀をし、神殿を見上げれば400年前の旦那の姿。
隣を見れば、今だ静かに願いを想う旦那の姿に思わず笑みを溢してしまった。

「お参りお済みの方は、お神酒をどうぞー!」
「餅もどうぞー!!」

その声に釣られて列から出る。

「旦那!・・旦那ぁ!お神酒、戴きなよ!」

あぁ、何を願ったんだか、その晴れ晴れとした笑顔。
昌幸様、旦那の願い、聞いてあげてくださいね。

「うむ!甘酒もな!!」

「もう、一杯だけだからね。」


「そうだ。・・佐助!」

「あ、・・旦那!!」




「「あけましておめでとう!!今年もよろしく!」」



END

お年賀メールで送らせていただいたもの^^;

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