BASARA話 2

□休日デート  (A3様に捧ぐ)
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広い庭が見渡せる、リビング。

外からは、子供達がはしゃぐ声。
幸村がボールを蹴ったと思ったらすぐに政宗に取られ、それを幸村が取り返す。
本人達はきっとプロの選手になっているつもりでプレイしているのだろう。
しかしその動きは、佐助から見れば子犬同士がボールにじゃれついているようにしか見えず、その微笑ましい光景に笑みが溢れた。

「こんにちは、小十郎さん。勝手に上がっちゃった。」

「佐助。出迎えなくて、すまなかった。」

小十郎は腕捲りをしながら、カウンターでコーヒー豆を挽いていた。
ごりごり、と音をさせながらハンドルを回せば、その度に辺りには芳ばしい香りが漂ってくる。

「うわぁ、レトロな道具・・手で挽いてるの?」

「電動は豆に熱を加えちまうから風味が落ちる。だから、特別なモノは手が一番だ。」

「ふぅん、そうなんだ。」

小十郎から、上手い珈琲豆を手に入れたとメールがあったのは一昨日。

『一緒に飲まないか?』

その文面に胸が高鳴った。
今までは「子供達の保護者」という立場で行っていたメールのやり取りも、あの宿泊保育の日からは、少しだけ意味合いが変わってきた。
気持ちが通じあってから、初めての週末。
勿論、幸村と政宗を一緒に遊ばせてあげたい気持ちが一番だが、それは同時に自分達の、ささやかなデートとなる。

「一昨日仕事で行った先で、時間潰しで入った店のブレンドが美味かったんだ。」

「へぇ。」

豆を入手した経緯を話す小十郎に、佐助はゆっくりと相槌を打った。
こうして顔を合わせて話をするのは、バイトが休みだった週始め以来。
付き合い始めた二人にとっては、貴重な時間だ。
挽き終わった豆をコーヒーメーカーにセットして、小十郎は佐助の隣に腰を下ろす。
外から聞こえてくる元気な声に視線を向ければ、庭中駆け回る子供達。
その姿が下ろされたブラインドに映り、スクリーンに写し出された影絵のようだ。
幸村の後ろ髪が綺麗な線を描き、政宗がそれを追うような優美な絵。

「旦那ってば、朝から”早く行こう!!”って煩かったんだよ。」

「政宗様も幸村が来るのを楽しみにしていらした。」

「仲良いよね、あの二人。」

「ああ、全くだ。」

そして視線は庭に据えたまま、小十郎は佐助を抱き締める。
「ちょっ!・・」

「今なら見えない」

「そう・・だけどっ・・」

拒む言葉が口を突くも、ゆるりと頬を撫でれば、佐助は途端に惚けた表情になった。

「子供たちが・・・」

そう言いつつも、佐助の唇も小十郎を誘う。
想いが通じ合った同士、触れたいと思うのは当然の事。

「佐助・・」

「・・小十郎さん」

お互い熱い吐息を感じながら、唇が触れ合う




寸でのところで・・・・




「佐助ぇぇぇええ!!!お水飲みたいでござるぅぅうう!!!」

「小十郎ーー!ジュース!!」



推し測ったような、主達の声に



「ははははいよっ!!!!旦那ぁぁっ!!!」

「はいっ!!政宗さまっ!!」


名残り惜しいなどそんな感情は抱く暇すら無く、ガバリと身を離した従者二人は慌ただしくキッチンに駆ける。
佐助は汗で濡れた髪を拭いてやり、小十郎は二人分のオレンジジュースをコップに注ぎ手渡すと、政宗と幸村は喉を鳴らしながら一気に飲み干し、また庭へと遊びに行ってしまった。

「ははは・・、こんなモンだよね。」

「ああ、こんなモンだ。」

二人は顔を見合わせ、苦笑を浮かべるしかなかった。


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