BASARA話
□保護者恋愛 5 (149〜152)【R18】
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連れてこられた部屋は小十郎さんの自室。
壁際には大きな机があり、パソコンと大量の書類が積み上げられていた。
「書類がたくさん・・」
「ああ。政宗様がお休みになられてからは、ここで仕事をしているからな。」
一緒だ、と思った。
子供が寝てからレポート書いたり、大学の友達にメール返信したり。
乱雑に置かれた書類や本。
几帳面だと思っていた彼の意外な一面を垣間見た。
廊下の照明が、開けっぱなしのドアから溢れて、小十郎さんの表情を優しく映し出す。
「佐助…」
ベッドに下ろされ、名を呼ばれた。
いつもとは違う、欲を孕んだ声に、ぞくりとする。
「佐助…お前をこの俺にくれないか?」
ずっと欲しかった言葉。
「うん…。俺にも小十郎さんをちょうだい。」
そして優しいキスが降ってきた。
唇、鼻先、頬、そして耳朶を噛まれ、首もとに唇が寄るとチクリとする痛みが走る。
「痛っ。な、何を…」
「…俺のモンだという証だ。」
証?と呟けば、「綺麗に付いたぞ」と、悪戯が成功した子供の様に満面の笑み。
キスマークを付けられたんだ、と、その場所を手で撫でた。そして大学の友達が首元を押さえて照れ臭そうに笑っていたのを思い出す。
(そっか、キスマークって、こういう状況で付けるんだ。)
彼が照れていた理由がやっと解り、それと同時に、自分は何にも知らないんだと自覚する。
その途端、襲ってくる緊張感。
「すまない。…嫌だったか?」
黙った俺を気遣う言葉に俺は慌てた。
「ううんっ、違うんだ。…そうじゃなくて…俺様、何もかもが初めてなんだ。キスだって…」
だから不安なんだと伝えようとしたら、小十郎さんから「すまん」という謝罪の言葉が聞こえてきた。
「な、なんで小十郎さんが謝んのさ。」
「俺は・・初めてじゃない。」
「それが普通でしょ。ハタチも越えて、キスすら初めてなんて、俺の方がオカシイよ。」
すると小十郎さんは視線を外し、小声でぼそりと呟いた。
「そういう事じゃなくてだな…いや、”お前にするのが”初めてじゃ、ない…というか…」
「は?どういう事?」
想いを打ち明け、やっと通じ合った者同士。
なのにベッドの上で押し問答。
「あのな、あー…、実は…」
やっとの事で、しどろもどろに話し出す彼は、未だ視線は合わせようとはしない。
「何、それ。俺、知らないよ。」
「ぐっすり寝てたからな。」
話を聞けば、あの風邪をひいた際の、様子を見に来てくれた時。
「ひっでぇー。」
「だから謝っている。」
「…嫌いだ。」
「俺は好きだ。」
「…もう。」
勝者、片倉小十郎。
気が付けば、俺の緊張や不安な気持ちは取り払われ、残るは彼への愛しい気持ち。
迷彩のジップアップのパーカー。旦那が「佐助はいっつもコレを着てるな」と笑って言う程の、俺の気に入りの服。
彼がそのファスナーに手をかけた。
ジジッ・・というスライダーを下げる音が、室内に響く。
そして、下に着ていたシャツのボタンを一つづつゆっくり外されて。
「俺ばっかりじゃん。小十郎さんも脱いでよ。」
「大胆だな。」
そう言うと、小十郎さんはニヤリと笑い、自分のシャツも脱ぎ始めた。
曝された逞しい体に、俺の視線は釘付けとなる。
「すごい・・」
鍛え上げられたその隆起した胸元に手をやり、もう一度、すごいと言えば「政宗様をお守りするためだ」と返された。この男はボディガードまでも務めてしまう気だろうか?
本当に彼の第一は、政宗なんだと思う。
そして芽生えた、子供じみた嫉妬心。
「いいなぁ、政宗。小十郎さんの一番で。」
すると、
「お前の一番も、幸村だろうが?」
彼は笑いながら、そう言った。
そして、互いに抱き合い、唇を寄せる。
「さぁ、そろそろ…
・・お前を喰わせろ
佐助。」
「…んっ、」
噛みつくようなキスをされ、俺は全てを小十郎さんに委ねた。