BASARA話
□ふうふのはなし
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ピンポン、とチャイムが鳴った。
いつもと同じ時間・・だけど、昨日より10分遅いのは、隔週で発売されるビジネス誌をコンビニで買ってくるから。
「ただいま」
「おかえり」
そして無言で渡されるコンビニのレジ袋。
ほら、いつも通り。
隔週発売のビジネス誌がはいってる。
「あ、新発売のチョコだ」
「この前CM見て、食いたいって言ってただろ?」
「うん。・・ありがと。」
一緒に入ってたチョコレート。
俺はビジネス誌は読まないから、袋を渡される理由はココにある。
「ご飯出来てるよ。」
「ああ。」
小十郎さんは、スーツからラフな服装に着替えて席についた。
「「いただきます。」」
今日は肉じゃがとほうれん草のお浸し、ヒジキの煮炒めとアサリの味噌汁。
普段と変わらない普通のオカズ。
「旨いな、この肉じゃが。」
「ああ、お隣さんから、ジャガイモを頂いたんだよ。ほら、北海道の人でしょ?」
「そうか。このイモも立派だが、佐助の味付けで、更に旨くなる。」
モグモグと食べながら、なんて照れる事言うんだろうか、この人は。
真っ赤になっているだろう俺を、チラリと見遣り、
「まぁ、旨いのはいつもの事だがな。」
そしてクスリと笑う。
「お、お誉めいただき、光栄ですっ。・・もう、早く食べちゃってよ!」
そして俺は黙ってご飯を掻き込んだ。
「今日も仕事、忙しかったか?」
「うん、まぁね。明日からセールだから、その準備で終わったよ。」
「忙しい時は、弁当でも外食でも構わないぞ?」
自分だって忙しいくせに、こうやっていつも俺の事を気遣ってくれる。
「うん。でも、今日は早番だったから、帰ってくるの早かったし。大丈夫。」
小十郎さんの為に、ご飯作るのが一番の楽しみなんだよ。
「そうか。でも、無理はするなよ。」
「ありがと。」
明日の天気予報を放送していた夕方の情報番組。
カメラはスタジオに戻されたようで、美人なキャスターがにこやかな笑みを浮かべてこう言った。
『今日は11月22日。「いいふうふ」と読みまして、良い夫婦の日ですね!!』
「「・・・・・」」
一瞬流れた沈黙した時間。
「あ・・なんかもっと良いもん作れば良かった。」
「チョコよりケーキの方が良かったか?」
そして顔を見合わせ、くすくす笑い合った。
「ううん。チョコで充分だよ。」
「俺も、佐助の手料理なら何でもご馳走だ。」
「・・また照れる事言うし。」
「ま、普段通り、俺たちは『良い夫婦だった』って事だ。」
「自分で言っちゃう?」
「なんなら、これからベッドの上で証明してやってもいいが?」
「・・もうっ・・。」
そうだね。
今日もいつもと変わらず、幸せでした。
明日も
明後日も
その次も
ずっと、ずっと、
良い夫婦で
歩んでいこうね。
END