BASARA話
□休憩時間
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「うわぁ…」
「前田の風来坊からだ。」
今、俺様の前に広げられた光景。
昼休み中にやってきた、黒いニャンコの宅急便が運んで来てくれた奇跡。
「うまそー…」
クッキーとバウムクーヘンの詰め合わせとコーヒーに紅茶。
「極上のおやつセット、じゃん」
そう呟く俺様の独り言が、聞こえていないのか、はたまたスルーされているのか。
小十郎さんは携帯片手に、電話をし始めた。
きっと「前田の風来坊」へ連絡しているんだろう。
繋がる前に聞いておこうと、 「食べていい?」 と小声で話しかけたら、ちょうど電話が繋がったらしく、
「前田か?・・俺だ。・・ああ、ありがとな。」
そして、にこりと笑って何度か頷く。
「食べてもいい」のサイン。
何でも各地を転々としている放浪癖のある彼に、目新しいコーヒーを見つけたら連絡を寄越すように、と、言ってあるらしい。
その報告だろうか、厨房に行ってしまった小十郎さんは、しきりにメモを取りながら話し込んでいた。
「・・・さて。」
この美味しそうなスイーツは、どうしちゃいましょうか?
まずは飲み物。ポットに水を入れて、コンロにかける。
ひとつ摘まんで、袋から取り出す。
パクリと口に放り込めば、香ばしい香りと味が広がった。
「うまっ。」
甘さも丁度良く、大人な味がした。咀嚼しながら、材料を予想する。
「これは・・ナッツ入り!」
次々とクッキーを取り出しながら、種類のチェックは怠らない。
そのうち、コンロにかけていたポットの蓋がカタカタなった。
紅茶用のポットに、一緒に送られてきたティーバッグとお湯を注ぐ。 時間をみてカップに注げば、いい香りが辺りを包んだ。
「ん、爽やかな香り…おいしい…。」
小十郎さんほどじゃないけど、俺様だって十分美味しい紅茶は淹れられるんだ・・って、これは茶葉が上等だからかもしんないけど。
未だ電話中な彼を放っておき、俺はついついクッキーに手が伸びる。
「もっと食べたい・・って、思わせるモン、作りたいなぁ。」
もの思いにふけりながら、それでもしっかりと味わって。 気付けば、大半は俺様の中に消えていた。
「・・・おい。」
電話を終えて戻ってきた小十郎さんが呆れたような表情を浮かべる。
「ごめんなさい。…えと…商品開発の為…つうか…」
言い訳をしつつ、彼を見上げたら、
ぺろっ・・
優しく唇を舐められた。
「・・・・////???」
訳がわからず、口許を手で覆う。
「なっ、なに?」
「まったく、殆んど食いやがって。・・俺に残されてんのは、このチョコチップクッキー一枚と、
お前の口許についてた欠片だけか。」
くすくす笑いながらそう言った。
「ちょ・・ハズカシイ事しないでよっ!」
顔に熱が籠る。 この恥ずかしさを誤魔化すために、バウムクーヘンに手を伸ばしたら、
「これはダーメーだ!・・・クッキーを一人で食ったヤツには食わせられねぇ!」
ひょいと取り上げられ、持って行ってしまった。
そして、突然くるりと振り返り、
「可愛くおねだり出来たら、一切れぐらい食わせてやっても構わねぇが?」
「えっ、えぇー?!」
これからは、ちゃんと半分コしようと心に決めた、休憩中の出来事。
●END●
よしの様vもらってくれてありがとう!これからもよろしくね!