BASARA話 

□それも感情の一つとして
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どのくらい抱き合っていただろうか。

外が白々と空けてきた。

林の中の、僅かな闇に紛れて帰るのだろう。
佐助は忍装束を身に着け始める。

かちゃり、かちゃり、と、防具のぶつかり合う音がする。
ひとしきり用意が整ったのか、俺の前に腰を下ろした。

そして、


「ねぇ旦那。俺様が忍に戻るための最後の仕上げ、…してよ。」


そう言って差し出されたのは貝に入った深緑色の塗り化粧。薬草を練り合わせて作ったそれは、佐助の忍化粧の為の物。


俺はそっと親指に取り、頬と鼻筋に塗った。




「ありがとう」


そう言って、それを懐にしまう。

鉢金を着ける為に顔を上に向けた時、化粧したての頬に涙が一筋見えた。




なぁ、佐助。

次は戦の無い時代に生まれてこよう。

お前は、峠で茶屋を開きたいといっていたが、そこには俺も居てもいいか?

主従は三世っつう言葉があるが、
そこで主を待つのもいいだろう。

真田の団子はお前に任せるから
俺は政宗様の為に茶を淹れよう。


皆が笑って集える、茶屋にしよう。


どうか、その時まで・・・

    
どうか・・・


END
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