BASARA話
□定休日
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ちょうど開かれたページを見れば、色とりどりの涼菓の絵。
事細かに説明が入っており、凄いな、と言えば、まだ企画段階だよ、と返された。
ふと、積み上げられたノートに目がいく。
表紙に書かれた日付を見ると、この店に来る前のものだった。
佐助と自分が出会う前。
無意識にノートに手が伸びた。
開けばそこには沢山の洋菓子のスケッチ。
ショップの名前や電話番号、雑誌の切り抜きも貼られていた。
ページを走らせるうちに、ある文字が目に飛び込んでくる。
『cafe BASARA
火曜日休み
tel ・・・・・・ 』
そして、そこから数ページ捲ったところで
『c.BASARA
ショートケーキが懐かしい味がした。子供の頃に食べた感じ』
(まぁ、じぃさん一人でやってるケーキ屋から仕入れてたからな。)
日付を見れば、それは春だった。
小十郎の中では佐助と出会ったのは夏頃だと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
(春に・・・来たのか。)
メモを読み進めれば、この店の地図、そしてメニューが書かれており、
『コーヒーがめちゃくちゃ美味い。』
この言葉で終わっていた。
初めて入った店の感想で、自慢のコーヒーを誉められた。
今でも美味いと誉めてくれるが、それが第一印象だったなんて。
嬉しさで頬が緩む。
ちらりと佐助を見た。
ボウルをかき混ぜながら、ワッフルメーカーの温度を見ているその顔は、仕事の顔で。
(本当に菓子を作るのが好きなんだな。)
そして、菓子作りに熱中しているのをいい事に、更にページを進めた。