BASARA話
□願い事
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二
「……お邪魔…しますよ…っと!」
残りの力を振り絞り、ギィと、古びた扉を開ければ、もちろん中は真っ暗で。
それでも夜目は利くから大した問題でもない。
「……薬…師…さん、か。」
―――だったらこの傷、なおしちゃあくれないか?
「はぁ、はぁ…」
体が段々熱くなる。敵の苦無に毒が仕込んであったのだろう。この熱はただの熱じゃない。
あんなに大勢いるとは思わなかった。
どこの忍びかもわからなかった。
完全に負け戦。
敵から受けた傷を自分の苦無で切り開き、毒を出し、そして、手持ちの解毒薬で処理をした。
この毒に効くかどうかなんてわからないけど。
「…痛…いっ!!」
傷口がどくりどくりと脈を打ち、時々ズキリと心の臓が痛んだ。
指先の感覚は薄れ、意識も朦朧としてくる。
―――俺、死ぬんかな
今まで沢山の死線を潜り抜けてきた。
敵の拷問にあい、命からがら逃げてきたのだって一度や二度じゃない。
それでも死を恐れたことはなかった。
忍を道具としない変わり者の主。
その主の為に、命など捨てても構わないと思った。
なのに、今はこんなに死が怖い。
―――ああ、俺様、何でこんなに弱くなっちまったんだろ・・・
思い出すのは、竜の右目と称される強面の男。
一緒に居る度、徐々にヒトの感情が芽生えていくのが不思議と心地よかった。
初めて生きたいと思った。
「…ひっ……く、うっ…うぅ…」
涙が目尻を伝ってゆく。更にぼやける視界に入ったのは、古びた仏像の姿。
神や仏なんか信じたことはないけれど、今、願うは愛しい人と共に生きたいこの気持ち。
「生き…たいん…だ」
―――どうか、御加護を
そして佐助は意識を手放した。