BASARA話 

□願い事
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「……お邪魔…しますよ…っと!」

残りの力を振り絞り、ギィと、古びた扉を開ければ、もちろん中は真っ暗で。
それでも夜目は利くから大した問題でもない。

「……薬…師…さん、か。」

―――だったらこの傷、なおしちゃあくれないか?

「はぁ、はぁ…」

体が段々熱くなる。敵の苦無に毒が仕込んであったのだろう。この熱はただの熱じゃない。

あんなに大勢いるとは思わなかった。
どこの忍びかもわからなかった。
完全に負け戦。

敵から受けた傷を自分の苦無で切り開き、毒を出し、そして、手持ちの解毒薬で処理をした。
この毒に効くかどうかなんてわからないけど。

「…痛…いっ!!」

傷口がどくりどくりと脈を打ち、時々ズキリと心の臓が痛んだ。
指先の感覚は薄れ、意識も朦朧としてくる。

―――俺、死ぬんかな

今まで沢山の死線を潜り抜けてきた。
敵の拷問にあい、命からがら逃げてきたのだって一度や二度じゃない。
それでも死を恐れたことはなかった。

忍を道具としない変わり者の主。

その主の為に、命など捨てても構わないと思った。

なのに、今はこんなに死が怖い。

―――ああ、俺様、何でこんなに弱くなっちまったんだろ・・・

思い出すのは、竜の右目と称される強面の男。
一緒に居る度、徐々にヒトの感情が芽生えていくのが不思議と心地よかった。

初めて生きたいと思った。

「…ひっ……く、うっ…うぅ…」

涙が目尻を伝ってゆく。更にぼやける視界に入ったのは、古びた仏像の姿。
神や仏なんか信じたことはないけれど、今、願うは愛しい人と共に生きたいこの気持ち。

「生き…たいん…だ」

―――どうか、御加護を

そして佐助は意識を手放した。
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