BASARA話 

□はらり、はらり、
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『本日、県内中部、上田地方は雪が降るでしょう。』

ローカルな朝の情報番組が地域ごとの天気予報を伝えている。
幸村はパジャマ姿でぼんやりとテレビを見ていたが、キッチンからの、じゅう・・というベーコンの焼ける音とコンソメスープの良い匂いで徐々に目が覚めていった。

「はいはい、できたよ〜」

おお!と声をあげ、待ってましたとばかりに手を伸ばし、佐助からスープとサンドイッチを受け取る。

「今日の天気、雪でござる。」

「ああ、どうりで。昨日の夜から寒いはずだよ。」

幸村は、初雪になるなと呟き、窓の外を見た。どんよりと重そうな雲が山々にかかっていて、いつ降ってもおかしくはないだろう。

〜〜〜♪♪

「あっ!」

小さな声をあげ、幸村が携帯を掴み通話ボタンを押した。
佐助はその様子を呆れながらも微笑ましげに見たのは電話の向こうが自分の知っている相手だから。

「政宗殿、おはようござりまする!!」

あんな元気な声を耳元で聞かされたら、相手は堪ったものじゃあないだろう。
くすりと笑えば、それに気づいた幸村にギロリと睨まれて、慌てて”ごめん”と小さい声で謝った。

「本当ですか!・・・はい・・」

しばらく話した後、ピッ、という電子音と共に携帯は閉じられ、後に残ったのはにんまりと笑みを浮かべる、我が主。最後に「破廉恥!!」と聞こえたが、それはいつもの事だ。

「で、独眼竜は何だって?」

佐助の問いに幸村は更に笑みを深くする。

「政宗殿が24日に上田へ来られるそうだ。勿論、片倉殿もご一緒だぞ?」

「・・・へ??ちょ・・24日って・・イブ!イブじゃん!!どうしよう、仕事入ってたっけぇ!!」

慌てて自分の携帯で予定を確認しだした。スキーへ行くぞ、という幸村の声は届いていないだろう。

「クリスマス・・・か。」

政宗は何も言ってなかったが、無理矢理予定を空けたに違いない。
若くして家督を継いだ忙しい身なのに、本当に彼『ら』が、自分『達』に甘いのは、
今も昔も変わらぬままだ。





『なぁ、幸。24日、上田へ行こうと思う。』

『本当ですか!楽しみでござる。片倉殿は?』

『もちろん一緒だ。・・・”今”の冬はいいよな。会おうと思えばいつでも会える。』

『はい。』

『でも”昔”の忍が届ける、遠恋の悲しさで涙で滲んだ文を読むのも良かったがな。』

『そ、それはっ!!さしずめ佐助が雪の上に文を落としたのであって、決してそんな、泣いてなどっ!!』

『幸?』

『なんでござるかっ!!』

『I love you.』

『・・・!!!あっ、朝からなんと破廉恥な・・』

『こっちは夜だ。goodnight honey.』




政宗との通話を思い出す。 

赤くなった頬を隠すように席を立ち、

窓辺に寄れば、はらり、はらりと

空から舞い落ちる

純白の綿雪




「佐助ぇ!!雪にござる!」

「はいはい、・・まったく。『昔』は雪見て泣いてたってのに!」



END
・・上田のあれは何雪というのか?

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