BASARA話 

□決意
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差し出されたものは、自分には似つかわしくない、まるで女性への贈り物のようだった。

家へ帰り、再度箱から取り出してみる。

高く掲げれば、それは蛍光灯の光を反射してキラキラと光を放った。

こんなチープな光の元でも美しい光を放てるのは、これがそれなりに「本物」な証拠で。


恋人といえど、男の自分には勿体ないと思ったが、ただ終始無言だった彼が最後にいった言葉

―明日朝一番にテレビ見てみな―

いたずらっぽく笑う笑顔があまりに素敵で。

「はい」

と一言返事を返した。




次の日、まだ覚醒しない頭で思い出す。

(そうだ。テレビ…)

軽く腰を浮かすだけで、すべて事が足りてしまう狭いワンルーム。
テレビの主電源をいれれば子供向けの番組が放送されていた。

情報番組にチャンネルを合わせる。


そこに映った


彼の姿。




リポーターは、フラッシュに眩しそうにする彼にマイクを向けた。

『ご婚約が決まったそうで…』
『おめでとうございます』
『お相手は?』
『入籍はいつ頃に…』

矢継ぎ早に質問を投げ掛けた。

(あれじゃあ答えようにも答えられないだろうなぁ)
俺はぼんやりと画面をみつめていたが、次第に頭が覚醒し出す。

(…あれ、リポーターは今何と言った?)

『ご婚約おめでとうございます』

(…政宗殿、婚約されたのでござるか。)

画面の隅を見る

午前1時

自分と会った1時間後

あれは……別れの言葉だったのか?
やはり男同士。いつかはこうなると頭のどこかで理解していたが…

『wait!!』

ぼんやりした頭に彼の言葉が響いた。

『まだ婚約したとは言ってねぇ、これからするんだ。』

会場がざわめきだした。

もう消してしまおうか。

解っていたことではあるが、観ていて気持ちがいいものではない。

画面から顔を背けながら、電源を切るべく手を伸ばす。

『幸!!!』

名前を呼ばれてはっとした。

画面の向こうで彼が叫んだ。

カメラが彼の顔をアップで捉えている。

『結婚してくれ、幸。OKならさっき渡したヤツつけて、さっきと同じ場所に来い。言っとくが拒否権はねぇぞ?you see?』

OKなら…って聞いておいて、拒否権が無いとは。

…なんと、彼らしい。

映像はスタジオに戻されたみたいで
『どんな方なんでしょうか』
そんな話をコメンテーターがしている。
そして自分は再度電源を落とすべく手を伸ばした。

さて、これから忙しくなりそうだ。

まず、あの公園までどうやって行こうか。

多分、周囲の道路は大渋滞だな。

政宗殿が、巻くにまけないのだろうが沢山の報道陣を連れてきてしまうのだろう。

それからバイト。
休むって連絡入れないと。

代わりのスタッフはいただろうか。

まったく。

これだから政宗殿は困るのだ。

困るのだけど、大概自分も彼に甘い。

パジャマのままでベランダに出た。

朝日が眩しい。

そして昨日のそれを高く掲げる。

朝日を浴びたシルバーの三日月とダイヤモンドの星は

昨日とは比べ物にならいくらいの

美しい光を

作り出していた。


END
・・・・・・・・・
TV公開プロポーズをさせてみた。
幸村の方が冷静。きっと政宗はあわあわしてる…かな。
…1122記念に書いてたんだけど、プロポーズ話が二つになってしまったので(汗)
どんなもんでしょ(滝汗)
読んで下さりありがとうございましたm(_ _)m

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