BASARA話
□遠く離れた君を想う
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コトリ、
と、襖の外で音がした。
――草、か。
人の気配は一瞬にして消えた。
傍に控えていた家臣も小姓も、これには気づいていない。
他国で何か動きでもあったか。きっと草の者がその報告を置いていったのだろう。
目の前の、書き終えた書状に花押を記す。
これは武田のオッサンへの季節の便りだ。
そういえばアイツはどうしているだろう。
前に会ったのは、ふた月前か。
いつでも呼び出せる武田のオッサンが羨ましいぜ。
………っと。
あぁ、折角の印が曲がっちまった
邪念?
NO!
武田のオッサンのせいだ!
「これを。」
小姓に渡せば、丁寧に桐の箱に仕舞い、そして紐をかけた。