BASARA話
□とりとめのない、日常の話
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A3様からいただいたネタ・・
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「アイス買ってきて」
食後に小十郎さんにお願いをしてみたら、なんとあっさり買い物に出てくれた。
そういえば、今週のビジネス誌が見当たらないし、確か今月の家庭菜園の本も発売がそろそろだ。最近のコンビニは、雑誌の取り扱いも多種多様で感心する。
(あ・・ストロベリーアイスって言うの忘れちゃった。)
そんな事を思い出した十数分後、コンビニの袋を下げて小十郎さんが帰ってきた。
ちょっとそこまで・・の距離なのに、体を縮こませて帰宅した姿は、外の気温の低さを容易に想像させる。
「ありがと。・・寒かったでしょ。」
「ああ、まぁな。」
「あったかいモノ、飲む?」
「いや、いい。」
そして袋を差し出され、中を覗けば、俺の好きなストロベリーのアイスクリームと・・
「何?これ。」
小さな紙袋が入っていた。
ビニール袋から出して、小十郎さんに突きつける。
そうすれば、少し、ほんの少しだけ、視線を外した。
コンビニで紙袋。
切手や印紙、葉書など、丁寧な店員さんは紙袋に入れてくれたりもするけれど。
(・・って、この大きさといい、大きさの割にこの軽さといい・・)
まぁ、中身はコンドームに決まってる。
数日前の行為の後、空箱をゴミ箱に投げ入れたのを思い出す。
ちゃんと用意してくれるのは嬉しいけど、あえてこれに関して話題に出すのは恥ずかしいので、黙ってテーブルの隅へ置いた。
「あ、ありがとね。ちゃんとストロベリーアイス、買ってきてくれたんだ。」
袋の中からプラスチック製のスプーンを見つけ、いただきます、と声をかけた瞬間、
「ちょっと待て。」
こちらを見遣る小十郎さんと目があった。
「な、なに?」
「残念ながら、それは俺のアイスだ。」
「へ?」
アイスを買ってきて、とお願いした。
そして買ってきてもらったアイスクリーム。
これはどう考えたって、自分のではないのか?と疑問が沸き上がり、考えあぐねている隙に、ひょいとそれを取り上げられた。
寒がりな俺のために、室内は暖房器具によってかなり暖かくしてある。と、なれば、溶けてしまうのも時間の問題。
食べ物にはそれぞれ旬がある。美味しい時期に、美味しくいただくのが食を愛する俺様の理念。なので、小十郎さんが食べるにしろ、自分が食べるにしろ、ここは早く頂いた方が・・と思うわけで・・。
「ねぇ、溶けちゃうよ。」
「ああ。」
「ああ、って。小十郎さんが食べるんなら、それでもいいから、早く食べなよ。」
溶けちゃうよ?と、再度伝えても「いいんだ」と、簡素な答えが帰ってくる。
(・・っていうか、俺のアイスじゃね?)
未だにアイスが一つ。
よくわからない小十郎さんの物言いに少しイラっとしたけど、後で自分のも買ってくればいい。
意味のわからない行動に、いよいよ夫婦喧嘩勃発の予感がしたが、ここは少し大人になって、風呂の準備でもしようとバスルームへと向かった。
「よし、溶けた」
そんな声が聞こえてきたのは、あれからさらに十数分後。
佐助は自分のアイスを買いに行こうと、アイスどころか少し足をのばしてファミレスでも行ってしまおうかとコートに手をかけた時だった。
「だろうね。」
じゃ、ちょっと行ってくるから。
そしてコートを羽織った瞬間、ぐい、と手を引かれ、「うわぁ」と声をあげてしまった。
その拍子にバランスを崩してし、そして落ちたのは、小十郎さんの腕の中。
見上げれば、普段と変われぬ表情で見つめられている。
「な、何?」
「コート脱げ。」
「は?」
「寝室に行くぞ」
「へ?ちょ、・・っと!!何!?」
そしてそのまま手を引かれ寝室に入るが、何故か小十郎さんの手には、先程買ったコンドームとアイスクリーム。
(アアアアイスクリーム?)
それからベッド座らされ、あれよあれよと生まれたまんまの姿にされて。
自分ばかりが脱がされたのが恥ずかしくて、体にブランケットを巻き付けた。
小十郎さんはといえば、シャツのボタンを全て外して逞しい体が顕となったが・・・
ベッドに恋人同士で、お互い服は取り払われて。
そうなれば、これから起こる事とは一つだ。
「さて、佐助・・。」
男二人分体重を乗せ、ギシリとベッドが鳴った。
「な、なぁに?」
「アイスクリームが食いたかったんだよな?」
ニヤリと男臭い笑みを浮かべてじりじりと寄る様は、まるで野生の肉食獣と草食獣。
洞察眼と足の早さは誇れるものの、こう、力をかけられれば勝ち目は無い。
「・・・はい」
観念して返事をする。
絶対、絶対、良からぬ事を考えているに違いないこの男。
指で溶けかけたアイスクリームを掬い取り、ぺろりと舐めてみせ「甘ぇな」と呟いた。
「アイスはちゃんとスプーンで食えよ!!!」
ブランケットにくるまり、しゃがれた声で怒鳴ってやった。
今度から自分のものは自分で買いに行こうと後悔した、
寒い寒い冬の夜。
END
サーセンm(__)m