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□ミカタ
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何度望んだだろう、何も見えない世界を。
何度望んだだろう、何も聞こえない世界を。
何度望んだだろう、何も感じない、何も愛さない、何の感情もわかない、そんな世界を。
望みは叶わない。
それどころか、少年の彼女に対する感情は日々膨らみ続けた。
愛しいと思う気持ち。
膨らみ続け、自分を苦しめるこの感情を彼女に伝えたい。
しかし、自分は弱虫だ、臆病だ、何もできない!
ここでこうして息をして生きることさえ、精いっぱいだというのに。
彼女は、日々痛めつけられた。
日に日に彼女は弱くなっていった。
彼女が小さくなっていくのが、少年には痛いほどよくわかった。
それなのに、それなのに自分は何もできない。
臆病だから。
自分の行動が原因で、次の瞬間に何かが壊れるのが怖いから。
少年は目と耳をふさぎ続けた。
全てに、恐れ、悲しみ、不安を抱いて。
そして、とうとう。
彼女は少年の前からいなくなったのである。
――美南(みなみ)、美南!
少年の声は、もう、届かない。
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