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□ミカタ
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 愛情交差


 二日目、三日目、時は同じように過ぎていく。

 学校へやってくる生徒は徐々に増えているようで、以前の活気を取り戻しつつある。

 それでも完全には戻らない、欠けた三つの席が元に戻ることはないのだから。

 茜の姿は見えない。

 クラスでは「転校したのでは」という噂も流れている。

 実際のところ転校したわけではないのだが、遅かれ早かれそうなるのではと信じている生徒も多い。

 誰も近づくことのない空席を、和輝はぼんやりと眺めていた。

 そこへ今日もあの男がやってくる。

 このクラスの一員ではないのだが、彼がこのクラスに来て和輝と話をすることは日常茶飯事である。

 自分のクラスに友達がいないからこちらに来ているのでは、と心配するものもいるが、そういうわけではない。


「和輝、どうしたよ、幸薄そうな顔して」

「悪いな、生まれつきだ」


 冗談を言うものの、和輝は楽しそうではなかった。

 今日もやって来た蓮二の方に向き直り、何の用だと冷静に返す。


「電子辞書、持ってねえ? 次英語なのに忘れちゃってさ」

「持っているけれど、俺だって次は古文だから必要なんだ。悪いな、他当たってくれ」

「ちぇ、ついてないの」


 蓮二は頭を大雑把に搔きむしり、一組の方へと歩いて行った。

 和輝は蓮二が出て行った入り口をぼんやりと眺めながら最近の蓮二について考えていた。


 ――前より、俺の所へ来ることが増えたな。


 和輝と蓮二は、去年は同じクラスであった。

 その頃からよく絡む仲であったため、二年になった今でも蓮二が和輝の元へ遊びに来るのはおかしなことではなかったが、ここ最近は特に多いような気がしてならなかった。

 とはいっても、蓮二は話が面白く一緒にいて退屈しない人柄であるから、頻繁に来ることは和輝にとって嬉しいことでもあったのだが、それでも違和感を覚えずにはいられないのである。

 他意があるのでは、と。

 しかしここまで考えたところで、和輝の思考は遮られた。


「おはよう、和輝君」


 何てことないその女子生徒の声に和輝は悪寒で震え上がる。

 蓮二とは全く別の意味で頻繁に和輝の元へやってくる生徒が、今日もまたやって来たのだ。

 和輝は声が上ずりそうになるのを必死でこらえ、そっと振り返った。


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