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□ミカタ
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 最後に、一言。

 その一言が生徒の耳に届いた次の瞬間、いつもより大きく感じるチャイムの音が校舎を震わせる。

 いつもは大変喜ばれる存在である授業終了の合図は、呆然とする生徒たちによって聞き流された。

 伊角が教室を後にする。

 その頃にはどこかのクラスからいつもの喧騒があふれ出そうとしていた。

 和輝は席に着いたまま、本日何度目かはわからないが窓の外へ目をやった。

 ただ、今度は遠くの自然や青い空ではなく、向こうに見える渡り廊下を急ぎ足で通り過ぎていく一人の教師の姿を。

 疑問の芽は、少しずつ膨らんでいく。興味という得体のしれない液体を浴びながら。

 どこかで聞き覚えのある女子の声が自分を呼んだような気がした。

 それをわざと聞こえないふりでやり過ごし、頬杖をついたまま今は誰もいない渡り廊下を眺め続ける。

 和輝は口元に少しだけ笑みを浮かべると、伊角が最後に言った一言をそっくりそのまま呟いたのであった。



「後悔のない日々を過ごしてください」



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