おおきく振りかぶって

□俺だけの投手
1ページ/10ページ

ピリリリリ!ピリリリリ!と、携帯のアラームが高らかに鳴り響く。
俺はのっそりと起き上がり、あ゛ー、とか中年親父みたいな声を上げて携帯を掴んだ。
本日は、土曜日。
小学校の頃から続く週休二日制は、良くも悪くも俺たちを野球漬けの毎日にした。












*



「うす、」
「ぇ、ぅ…あ…、……う、うす…」
「………」
「……ッ!!」

只朝の挨拶をしただけなのに、三橋は肩を跳ねあげ、視線を泳がせ、逃げ出しそうになりながらも縮こまって返事をした。
畜生、またそれかよ。
俺は思わず三橋を睨んだ。途端に竦む肩。
俺にだって感情はある。そんな態度とられたら、傷つくに決まってんだろ。
はあ、と溜め息を吐くと、三橋はビクウ!と涙目になった。

「……あのなあ、」

だから、傷つくんだってば。

「お前、いつまでそんな態度とるつもりなの」
「うっ、ご、ご、め、んなさい……」
「おーい、阿部、三橋ー!集合だぞー!」
「うううあっ、はい!」
「あっ、オイ三橋!」

天の助けと言わんばかりの返事をし、ピューッ!という効果音が似合う走りで、三橋は皆がいるところへ駆けていった。
残された俺は、唖然と三橋の背中を見つめる。

「……そんなに、こわがんなくても良いじゃねぇか」

顔が怖くて口が悪いのは、自覚してるんだよ。
笑ったら笑ったで、お前ビビるし。
どうすりゃ良いんだっつーの。

「阿部ー!」
「今行く!」

舌打ち一つ、駆け出した。











次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ