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□矛盾的撫循
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「飽きもしないで…痛くないの?」


アディーネさんにめちゃくちゃに殴られたヴィラルを引きずって
あたしは自室に彼を連れこんだ



まだ止まらない鼻血にどうしようかと悩みながら
あたしはヴィラルの頬に手を当てて溜め息を一つ。


「フン、貴様の知ったことか。俺は絶対に諦めはしない」



鼻にティッシュ詰め込んだまま
ンなカッコイイ事言っても…ねぇ、隊長さん。


ヴィラルは変に人間臭い。

古風だし、昔々人間が持ってた『武士道精神』が好きみたい。


そんなんだから負けるんじゃない?
なんて言ったら多分ぶっ殺される


あたしにはよく分からない人間風な精神と行動が結構サマになってる彼を見ると

少し寂しい。


人間に興味は無いけれど、
貴方に興味は有るのだから、存分に。



「………何考えてる」


「ぁ。」



気付くとヴィラルの顔見たまま物思いに耽ってた

気付くと急に話さなくなったあたしを不審に思ったのか、
頬に置いてたあたしの手は
彼の片手で握られていて
もう片方の彼の手はあたしの頬に。


鼻血は止まったみたいで安心したいところだけど


近い、近すぎる。





ヴィラルの手が触れてる所が妙に熱いのは何故なのか

相手に聞こえそうな程に鼓動が煩く鳴るのは何故なのか




あたしには見当がつかない。


こんな事昔はなかったのに。




「アンタの顔見てると、ものすごく…イライラするなと思ったのッ。」



かろうじて浮かんだ言葉
別にあたしは素直じゃない、訳じゃない。




「喧嘩売ってるのか、お前」


ヴィラルの眉間に皺が増した。



ス、と手を離されて
どうして?少し残念に思うのは。


分からないんだよ
この気持ちが何なのか



あなたは知ってるの?



近くに居たら体温が上がるのに
遠くに行ってしまうと心が痛む。


「どうした、今日のお前何処か変……」


言いかけたヴィラルの細い腰に手を回した。


「なっ…!!」



胸に額をくっつけると
なんだ安心。



彼の鼓動も煩かった
もしかしたらあたしのよりも煩いのかもね



「うっふふふ」

「ッ!!?」



あぁなんか嬉しい
力込めてぎゅう、と抱きしめると


ガッチガチに固まってたヴィラルの体が更に硬直した。



「何でかな、こうしたら安心するのよ。」

彼の鼓動の音を聞きながら囁くと
固まっていた体が次第に緩んできて


しまいには盛大な溜め息を一つついて、胸に押し付けられたあたしの頭の上に手を置いた。




「安心したか?」


視線を上げると彼は呆れ顔
でも少しだけ赤いから
あたしまで気恥ずかしい。



答える代わりにあたしはまた額をヴィラルの胸に引っ付けて
ゆっくり目を閉じた。




傷だらけの彼にまで介抱してもらうほど
あたしは弱ってるのだろうか。



こんな弱みに名前があったら
誰か教えて



説明つけられないまま
貴方の顔見てイライラするより
よっぽどマシだから。



end.



 

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