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□スタンドアップ・ブラザー
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そこには
いつものセクシィさがなくて、
いつものヒョウヒョウっぷりがなくて。

それでも
そこに木手永四郎はいた。
それでも
そこに彼は光を見つけ出す。






異質なシチュエーションだった。
それはもしかしたら、みじめだったかもしれない。
彼の前に努力は何の意味ももたず、
たとえば木手がトップオブザワールド的に最強だったとしても
ラズベリー賞並にヘボプレイヤーだったとしても、
目の前に用意された沖縄便チケットの日付を、
もっと、もっと先へと延期するかしないかには
何の関係も持たなかった。

彼がどうあがこうとも
確実に
決定的に
比嘉中の夏は終わっていた。

それでも彼は
いつものセクシィさとヒョウヒョウっぷりを失わせて
獰猛な眼で
相手に
観衆に
すべてに喧嘩を売った。

執念とプライド
固執し続けたい、
「勝ち」に。
何かにすがりついていないと
生きてる、て感じがしないんだ。

コートから立ち去って
必死に永四郎、と叫ぶ部員の声は
どんな風に木手に届いたんだろう。


ねぇ、
ちゃんと、
見てるよ。
全部
全部ね、永四郎。


ゲームセット
見えなかった頂点の風景

レギュラー揃って、
何だか案外明るかった。
それが俗に言うカラゲンキ、てやつかどうかは
本人以外誰も知らない。




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