本棚2
□(弟の)ご利用は計画的に
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「ン、く…っ」
せめてこれ以上情けない声は、出すまいと。
「んん…っ、ッ、あ…!」
噛み締めていた筈の唇は哀しくもあっさりと解き放たれる。これが、己の声か。
「ぁに…っ、や、ぁああアッ!!」
「は…、入り口はもうこんなに柔らかいのにナカは相変わらず狭いねぇ。お兄ちゃんの指、千切られちゃいそうだよ」
「ァ、んンッ」
前触れなく後腔に指を突き立てられ、その指は明らかに慣らす以外の目的を以て容赦無く前立腺ばかりを攻め立ててくる。
突き刺すように爪の先で刺激されるたび、切れ切れにあがる悲鳴が耳障りだった。
「あ、やっ……も…ッ」
「イきそう?」
穏やかな声とは真逆の激しい指の動きに、翻弄されながらも首を縦に振る。
しかし期待は裏切られ、訪れたのは絶頂感ではなく喪失感だった。
「なんで…っ」
「ああ…何て顔だいハーレム。そんな物欲しそうに誘うみたいな表情、誰にでも見せているんじゃないだろうね?」
「して、ねェよ…!」
「どうだか」
「あ…っ?!」
腕を引かれて無理矢理に立ち上がらされる。
入れ替わりにマジックが悠々とソファに腰を下ろし、これ見よがしにズボンの前を寛げてみせた。
「欲しいなら好きにすると良い。要求にも応えてあげよう。ちゃんと言えたら…ね」
――もう止める、と言えた筈だった。
暑くて、熱くて。
気を抜けば、特戦部隊長として鳴らした己でも意識を飛ばしてしまいそうな程なのに。
「あ、ア、また…ッ、またイ、く…ぅっ!!」
もっと熱くて火傷しそうなものを自ら腹に納め、ソファに座るマジックの膝に跨がり必死になって腰を振っている。
そんな己の様子をどこか他人事のように感じながら、ハーレムは最早何度目か分からぬ絶頂に達していた。
「く…っ」
「はぁ…ア…!」
マジックが呻くと同時にヘソの奥辺りに新たな熱が溢れ、やがてジワジワとハーレムの体温に馴染んでいく。
この感覚にまた、煽られて。
「ぅ、く…んン!」
「…ッまだ、するのかい?」
マジックの肩を掴む手に再び力を込めて腰を揺らし始めると、少し驚いたような声が発せられた。
正直もう止めたい。だが、止まらない。
「も…、やッ…ぃやだ…ぁア…!」
「言ってることとやってることが、噛み合ってないよ…仕様の無い弟だ、ねっ」
「か、はっ――…!!」
ズンッと腹の奥深く迄を串刺しにされ、せり上がる内臓による圧迫で息が詰まる。
「…っ、…ッ!!」
そのまま下からガツガツと突き上げられ、ハーレムは全身を痙攣させた。
唇は叫ぼうと、また酸素を取り込もうと開きはするが、掠れた息が吐き出されるばかりで役には立たない。
間断無く訪れる快楽の波に半ば恐慌状態に陥り、目の前のマジックに力任せにしがみつくことで窮状を訴えると、この馬鹿馬鹿しい交わりが始まった時と同じように深く口付けられた。
「ンッ、ふあ…っ、んぅっ!!」
歯が当たることを恐れ、必然、口は大きく開く。そこに付け入られ、侵入してきたマジックの舌に口内を掻き回されれば、上下を同時に犯されているようで最早意識すら朦朧としてきた。
「…ッ…ァ…、…!」
「は…、何だい?」
あにき、という短い単語すら音にならず、はくはくと唇が動くだけで。
マジックの肩に突っ張っていた筈の腕からはいつの間にか力が抜け、すがるように只、その赤い軍服の胸の上にもたれ掛かっているのが精一杯だった。
「ああ…もう限界か。…おつかれさまだったね、ハーレム」
「――ひ…ぅ…ッ!」
それが、最後に聞いた声。
体を縦に裂かれるような強烈な突き上げを感じた瞬間、まるでブレーカーが落ちるかの如く、ハーレムの意識は暗転した。
――結局
気を失ったハーレムが目を覚ましたのは丸一日以上経ってから、それも医療棟の一室でだった。
全身を襲う倦怠感と鈍痛に苛まれるハーレムに、高松が笑いを堪えきれない様子で「災難でしたね、でも自業自得です」と開口一番言い放つ。
どうやらマジックは、自分をダシにして医療棟で涼むつもりであったらしい。
「クソ兄貴め…」
「でもアンタの代わりに遠征に行かれたじゃないですか。軽い熱中症にさせるつもりがやり過ぎたって反省してましたよ、珍しく」
「…だったら初めっからやめとけっつの」
「アンタも流されずに拒否すればよかったでしょう、子供じゃあるまいに」
点滴を換えに来た高松相手にクダを巻くが全く以て正論を突き返され、不貞腐れながらゴロリと寝返りをうつ。
「ッ…あ"ー腰いたい、気持ちワリィ、だるい、ヒマ!」
「だから自業自得ですって」
「つまんねェ」
「寂しいんでしょう。マジック様に置いていかれた形になりましたからね」
「…ばーか」
「はいはい。とっとと回復して、とっととマジック様追い掛けて行ってください。そうですね、明日にはもう出立出来ますよ」
「………ねる」
そう言えば、軽く頭を撫でられた。
つい先程「子供じゃあるまいに」と言っていたそばからこの扱い。だが、悪くない。
明日も暑くなるのだろうか。
そんなことを考えながら、ハーレムは目を閉じたのだった。
まったく、
お熱いことで