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□心友!
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一体どれ程の経験をすれば、そう言わしめるような考えに至るのだろう。
同い年である筈のアラシヤマの存在が一気に遠くなるように感じられた。


「…昔、色々ありましてん。けど…マジック様に拾うてもろて…同じ特異体質のお師匠はんに預けられて。ワテは、ワテにも、憎悪と恐怖以外の感情があるて…教えてもろた」


もしかして、とシンタローは思う。

自分とアラシヤマは対極なのだ。
青の一族でありながら金の髪も青い瞳も、何より力も持たずに生まれ、しかし曲がりなりにも愛されて育った自分とは何もかもが。

だからと言ってどうなる訳でもない。
それは“そういった生まれである”という事実でしかなく、何者も代わることは出来ないのだから。


「すんまへん、何や変な話になってもうて。終わりましたえ、シンタローはん」


その声にぼんやりと視線を落とす。
左足には丁寧にテーピングが巻かれていて、アラシヤマの性格が少し見えたようだった。


「…シンタローはん?」


長いこと黙り込んでいたからだろうか、アラシヤマが訝しげに顔を覗き込んできた。

自分と同じ黒い髪と瞳。
それはとても、綺麗で。


「なあ…」

「へえ?」

「お前…今、幸せか?」


何を言っているんだろうかと自分でも思う。

いきなりこんなことを聞かれたって困るに決まっているではないか。自分が情けなくて、目頭がかあっと熱くなる。

だがシンタローの意に反して、アラシヤマはすぐに口を開いた。


「幸せどす。過去も今もぜーんぶ引っくるめて、ワテは幸せどすえ」


ふうわりと、笑いながら。


「せやからシンタローはん。そんな顔、せんといておくれやす。なんや叱られて泣いてるお子みたいやわ…」

「な…っ」


気が付いたときにはもう、アラシヤマの腕の中だった。どう反応していいのか分からない。

でもその体温が心地よくて、何故だか涙が止まらなかった。


「シンタローはんは、幸せどすか?」

「…知らねェ」

「いけずどすなぁ…。まあ、ええわ…」


頬に温かいものが触れた。
それは、アラシヤマの唇で。


「そないに泣かはったら跡残りますえ?」

「お、おま…っ、何す…!」

「やってシンタローはん可愛いんやもん」

「かわっ…?!はああ??!!ッ、死ね!!このムッツリ野郎!!!!」

「ぐはぁっ!!!!」


右足で力の限り目の前のアラシヤマを蹴り飛ばす。

ものの見事に後ろに吹っ飛ぶアラシヤマを尻目に、どっと疲れたような気分になってベッドに仰向けに寝転がった。


「うぐ…、ホンマの事やのにぃ」

「黙れ、つぅか死ね。くそ、泣いて損した!お前マジで意味分かんねェぞ!」

「お互い様どす!怒ってるか思たらボロボロ泣きよってからに、みっともあらしまへんえ!」

「何だとォ?!」

「何どすか!!」


――その後医務室を半壊させた二人は、仲良く一ヶ月の謹慎を言い渡されたという。


心友!

「何だかんだでシンタローも、満更じゃ無さそうじゃけんどのォ」
「所謂ツンデレってやつだっぺや」
「どっちにしろホモのバカップルほど鬱陶しいものは無いっちゃ」
「いや、カップルじゃないから」
「え?!違うんどすか?!」
「ミトコンドリアからやり直せッ!!」
「マトリックス!!」

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