本棚2
□最初で最後の
2ページ/2ページ
「大丈夫そうだね」
「ふあ…っ、や、そこ…!」
奥の方まで進入してきたルーザーの指先が狙ったようにある一点を押し上げたとき、腰に甘い痺れが広がって上半身がベッドに崩れ落ちた。
「ココ?前立腺だよ、気持ち良いだろう?」
「や…っ、だ…!おか…ッ、おかしくっ、な…ッぁ、アあ!!」
更に指を増やされ、水音を立てながら掻き回されて、全身がガクガクと震えて止まらない。
後腔内で指が躍るたびに、自身からは栓が壊れたように白濁が溢れ続けた。
「そろそろ、いいかな」
何が、と思う間もなく音を立てて指が引き抜かれ、代わりに宛がわれた熱。
何をされるかは分かりきっていたが、やはり身体は逃げをうつ。
兄弟でこんな背徳的な行為を、というのもあるが、それ以上に恐怖の方が格段に大きい。
まして、あのルーザーなのだから。
「ひ…ッ、やだ、嫌…!」
「逃げちゃ駄目だよハーレム。悪い子にはお仕置きをしなくちゃならなくなる」
「嫌だッ、やっ、こわい…ッ、ぃ…や、ゃだァあッッ!!」
シーツを掻いて逃げようとしたのが、気に食わなかったらしい。
腰を両手で掴まれ、捕えた獲物を串刺しにするように、熱を持った楔が最奥まで一息に打ち込まれて、喉が裂けるんじゃないかと思うほど絶叫した。
執拗に慣らされていたからか、受け入れた痛みは殆ど無い。
しかし無理に身体を拓かれたショックと、内臓を全て押し上げるような感覚に、呼吸すら満足に出来ずに髪を振り乱して泣き喚く。
「っ、凄い締め付け…。初めてだからしょうがないか…!」
「んぁあっ?!アッ、あに、き!やめ…ッ、うご、かな…ッぁ!!」
息をつく暇も与えられずに何度も腰を入れられて、次第に意識が飛び飛びになってくる。
「か、は…っ!ゃッ…め、ァあア!」
「ん、やっぱり、顔が見える方がいいな。…綺麗だよ、ハーレム」
「ン、う…っ」
繋がった儘で身体を表に返され、覆い被さるようにして口付けられた。
意外なほどの優しいキスに戸惑い、離れていくルーザーの顔に思わず手を伸ばす。
こんなことをされて、怖い、のに。
「優しいね、ハーレムは…」
伸ばした手をいとおしそうに握りながらルーザーが見せた笑顔はとても、悲しそうで。
そしてどこか、歪(いびつ)に見えた。
「る、ざ…あにき…?どうし、ッぁ、ひぃっ!!いっ、アぁあ!?」
「っごめん…!もう、少しだからッ」
「あ、はっ、ゃ…あつ…、熱いぃ…っ!!」
突然再開された律動が余りにも激しくて、必死でルーザーにしがみついた。
何故だか、そうしていないといけないような気がして。
繋がった部分が溶けそうに熱い。
熱した鉄のようなルーザー自身に後腔を掻き回され、時折奥深くまで穿たれて、身体がバラバラになりそうなほどの快感に溺れていくのが分かる。
「く…ぅ…っ」
「ンあ…っ!!ぁ、アあ――…ッ!!」
腹の奥がジワリと熱くなり、ルーザーが中に熱を吐き出したのを感じながら、自分もか細い悲鳴を上げて達していた。
「かはっ、ぁ…にき…、なに…っ」
その瞬間、首を掴まれて苦しさに呻く。
気道は塞がれなかったが、頸動脈を圧迫されて頭に血が行かずに、次第に貧血を起こしたように目の前がぼうっとしてきた。
「…忘れるんだ、ハーレム」
「な…ん、で……?」
首を掴む手で、圧迫したり弛めたりを繰り返されて、ルーザーの声が遠くなったり近くなったりするのを、抵抗も出来ずに聞くことしか出来ない。
「忘れるんだよ?次に目を覚ました時には、もう何も覚えていない。…いいね?」
「る…ざ、ぁに…き……」
耳元から、脳に直接言葉を流し込まれているような錯覚。
忘れなければ、いけないんだと。
やがてそれだけが頭の中を支配して。
「おやすみ、ハーレム。…お前は僕の可愛い弟、だったよ」
意識が無くなる直前に聞いたのは、ルーザーの、悲痛で歪な告白だった――…。
最初で最後の
(忘れたくなんか、なかった)