本棚2
□命の歌を歌いましょう
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(南国以前)
「なんだァ?」
作戦という名のひと暴れの後、面倒な本部への報告を終えてブリーフィングルームにやって来たハーレムは素っ頓狂な声をあげた。
それもその筈。
デスクの上に思い切り場違いとしか言い様の無い、大輪の深いピンク色の薔薇の花束が鎮座していたからだ。
しかもそれが大ジョッキに適当に放り込まれているのだから何とも間が抜けている。
「あ、おっかえんなさーい!本部への報告お疲れさんです隊長」
「ロッドォ、やっぱテメェの仕業か」
「良いじゃないっすか〜。たまには癒しも必要デショ」
ソファに寝転がっていたらしいイタリア人がひょっこりと顔を出してヘラヘラと笑う。
聞けば、街を破壊する際に目についた花屋から何と無く持ってきたのだと言う。
だが、それにしても――
「ったく、マリアカラスなんざ御大層なモン持って来やがって」
「えっ!?名前あるのコレ」
「知らねェで持ってきたのか」
「あったり前じゃないすか。寧ろ隊長が詳しいことに吃驚しちゃってるんですケド。へー、そんな名前なんだ。オペラ歌手でしたっけ?」
心底感心したらしいロッドは、花を一本抜き取ってクルクルと手の中で遊ばせる。
薔薇の香りがより一層部屋を満たしていき、それに誘われるようにハーレムはロッドの隣にドッカリと腰を下ろした。
「そうだ。ルチアぐらいは知ってるだろ、イタリア人」
「えーっと、恋人と引き離されて政略結婚させられそうになった相手を刺し殺した後で、狂って死んだ女の話でしたよね」
持っていた薔薇で、えいっと刺す真似をしてみせるロッドの頭を軽くはたく。
「…間違っちゃいねェがもう少しマシな表現は無いのかオメーは」
「ってー!だってオペラって大概話が暗いじゃないすかー。それに長いし」
「ランメルモールのルチア最大の見せ場、狂乱の場。狂ったルチアが歌い続ける場面のソプラノは、そりゃあ見事なもんだ」
そう言えば昔よく兄達にせがんでマリア・カラスのレコードをかけて貰ったな、と柄にもなく思い出に浸る。
歌詞の内容は退屈だったが、あの歌声には魅せられたものだ。
「へー。あ、でもあれ、ドン・ジョバンニは好きかも」
「全ッ然方向性が違ェだろ…。まあ女ったらしのお前にゃ似合いだわなァ」
煙草をふかしながらケラケラと笑い飛ばす。
すると、目の前に薔薇の花とロッドの右手が差し出された。
「お手をどうぞ」
「…俺がツェルリーナって柄かよ」
納得いかねェなと笑いながらも煙草を揉み消し、劇中のツェルリーナの様にあっさりとその手を取った。
そのままぐいと引き寄せられればむせ返るほどの薔薇の芳香に、先程の戦闘で高揚した頭が酔わされる。
「ン…」
唇を塞がれ鼻にかかった吐息が洩れる。
軽く啄む程度のキスだったが、互いの欲に火を着けるには充分だった。
「は…珍しいっすね、隊長も乗り気なんて」
「うるせー。つーかココですんのか?」
「いまさら!それともエルヴィーラに連れ去ってもらいたいの?」
「まさか。今日のジョバンニはついてるぜ?」
ニヤ、と浮かべられた笑みが堪らなく妖艶で。
これは自分の方が罠にかけられたかな?などと考えながら、ロッドは深くハーレムに口付けた。
「んぅ…っ、ふ…」
煙草の味がするハーレムの口内をたっぷりの唾液と共に舌で掻き回してやれば、負けじと後ろ頭を掴まれて角度を変えられ、逆に舌を絡め取られる。
これではどちらが攻めているのやら。
そう思ってしまったのが少し悔しくて、ロッドは口付けを交わしたままハーレムの前をズボン越しに軽く握ってやった。
「ンンッ!?っふ…あ、ン…ッ」
「隊長エッローい。ね、何でもう勃っちゃってるの?」
突然の刺激にハーレムは体をビクリと痙攣させ、銀糸を引いて唇が離れていく。
ソコは既に硬く張り詰め、窮屈そうにズボンを押し上げていた。
「疲れてたら勃ち易いって言うけど、今日は疲れるほども暴れて無いデショ。それとも暴れ足ンなかった?」
「うあ…ッ、あっ…!」
今度は強めに押しながら緩く上下に擦ると、面白いようにハーレムの体が跳ね回る。
じわりと湿り気を帯びてきた先端辺りを集中的に弄びながら、ロッドは片手で器用にハーレムのシャツを肌蹴させて胸の飾りに舌を這わせた。
勿論反対側も指で刺激を与えることを忘れない。
「あああッ、や…っ、ロッドォ…!」
「乳首も勃ってるよ、隊長。あれっくらいの戦闘でココまで興奮しちゃうなんて相当溜まってたんだねェ」
飾りに軽く歯を立て、反対側は指の腹でグリグリと押し潰すように捏ね回す。
「このままイかせちゃおうかな」
「ン…っなコト、しやがったら…ァッ、タダじゃおかね…!」
「ハイハイ。隊長は冗談じゃ済ましてくれませんからね」
生理的な涙を浮かべる瞳のその奥で青い光がチラついた気がして、ロッドは肩を竦めた。
ズボンの前を寛げて下着をずらしてやると、途端に飛び出してくるハーレム自身。
先端から先走りが溢れ、少しの刺激で弾けてしまいそうだ。
「ぅ…く…」
「もー少しガマンして」
下半身から衣服を全て取り払い広げた両足の間に体を割り込ませると、その根元を指で握って戒める。
「ぃアッ!」
「すご…、ガチガチだよ?」
先端にキスをしてからゆっくりと口内に迎え入れた。そのまま口をすぼめて喉の奥まで咥え込み、ぐっと飲み込むようにして刺激してやる。
すると、たった数回でハーレムの内腿が小刻みに震え出した。
咥えたままチラと見上げれば、濡れた青い瞳と視線がかち合う。
既に息も絶え絶えといった様子にロッドは少し驚いて口を離そうとしたが、その途端ニヤリと笑ったハーレムの手に頭を押さえ込まれた。
「ンぐッ!!」
「はっ…ア――!!」
根元まで思い切り咥え込まされて息が詰まり、思わず戒めていた指を離してしまった。
それが決定的な刺激となって喉の奥でハーレムの熱が弾けた。
ドロリとした液体が食道に流れ込んで行く感覚に、ロッドは体を震わせる。
「ぶはっ!たいちょ、ひっでーよ死ぬかと思った!」
達したことでハーレムの力が抜けた瞬間を見計らい、慌てて口を離す。
「オメーが焦らしたりすっからだろォが!!」
「あんま焦らして無いデショ!!そんなにガマン出来ないなら、今日はもう手加減ナシ!!」
「あ?」
「……気ィ失うまで犯すから覚悟してね、隊長」
欲望剥き出しの雄の目で一睨みすると、ハーレムが一瞬怯んだ。
その隙に両足を掴み、下半身を捻るようにして一気にうつ伏せにさせる。
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