本棚1―1
□仰せのままに
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(特戦期)
ふと、肩が寒くて目が覚めた。
「コイツ…」
昨晩の情事の後で一緒に寝ていたリキッドが、寝返りをうったせいで布団がずれたことが原因らしい。
最近めっきり冷え込んできて、今のように朝方は特に寒い。
裸のまま寝るのはそろそろキツいな、などと考えながら背を向けて眠るリキッドの腰に手を回して引き寄せる。
「ん…」
「ぁー…、あったけー…」
直接触れ合った肌からリキッドの体温がじんわりと伝わってきて、思わずそう呟いた。
触れた刺激からか、それとも冷たいのか、腕の中のリキッドが吐息を漏らしながら身動ぎをする。
頭がフラフラ動いてることからして、目が覚めたらしい。
「ぅー…?」
「起きたか?」
「んー…まだ…ねむ、ぃ…」
寝惚け半分の声で応える様子は年齢以上に幼く見えるのに、裸身という今の状態は卑猥さに拍車をかけるだけで、中々腰に来るものがあった。
そう頭が知覚してしまったが最後、はっきりと形になる己が欲望に苦笑するしかなく。
「なァ」
「…や、です…」
「まだ何も言ってねェだろ」
うなじに鼻先を近付け、すん、と匂いを嗅げば昨日洗ってやったままの石鹸の香り。
――…乱してやりたい。この、清爽さを。
「リキッド」
「なに、ン…ッ」
腰に回していた腕の片方をリキッドの口元に持っていき、文句を言うために開いた唇を割って指を捩じ込む。
「舐めろ。噛むなよ?」
「んぐ…っ、ふ…ぅ…」
噛み付いたら容赦はしない。
そう暗に臭わせて、突っ込んだ人差し指と中指で舌をつつく。
するとまだ眠いのだろう、緩慢な動きではあるが素直に舌を絡めてきた。
部屋の空気と違い、リキッドの口内はひどく熱い。それを楽しみながら、反対側の手を前に伸ばしてリキッド自身を軽く握ってやった。
「ンん…っ、ぁ、あ」
「…しっかり勃ってンじゃねェか。先走りまで垂らしやがって」
そう言いながら指を口から引き抜くと、早速後腔へとその濡れた指を滑らせる。
爪先が潜り込むか否か、ギリギリの所で緩急をつけながら入り口だけをしつこく弄ってやったら、自身をただ握っていただけの手にまで溢れた先走りが伝い始めた。
腰を中心に、か細く声をあげるリキッドの体が小さく痙攣している。この分だとあと僅かな刺激で達してしまうだろう。
「ゃ、た…いちょ…っ、も…!」
「まだ出すなよ。そうだな…俺がイくまで耐えたら、一個だけ言うこと聞いてやらァ」
何でも、って訳にはいかないが。
どうせ出来やしねェだろ?と挑発するように耳元で囁くと、この負けず嫌いな子供は自ら前に怖々と両手を伸ばした。
意図するところを読んで自身から手を離せば、入れ代わるように勃ち上がった自身の根本と先端を掴んだ、リキッドの震える手。
こいつは今、どれだけ加虐心を煽るような姿をしているのか理解してはいないだろう。
自分自身をイけないよう戒めるなど被加虐的以外の何物でもないが、リキッドはそうは思ってはいまい。
「ぅ、く…っ」
「まあ…頑張んな」
「ぁふ…!ン、ゃ…っ」
入り口を滑っていただけの指を後腔に二本とも潜り込ませると、途端に跳ね回る体。
空いた片手で抱き込むように押さえ付けて、指は更に奥を目指した。
口内よりも熱いそこは何度体を重ねようと未だに狭く、達しまいと力を入れているせいもあって中々にキツい。
「食い千切る気かよ」
「知る、か…ァッ、あ、ひ…!」
いつものように自身を愛撫してやって気を散らす事も出来ないので、とりあえず本番よろしく指を抜き挿しして快感を与えてやる。
行為に慣れた体は直ぐに反応を示し、分泌された体液で楽に指が滑るようになった頃を見計らって、三本目の指を捩じ込んだ。
「ひあっ!? や、そこ…だめ…っ」
「なんだァ?もう降参すンのか」
「ちっげーよ…ッ、あ、ぅ、ンく…っ」
抜き挿しを止めて三本の指で代わる代わる前立腺を突っつき回したら、刺激から逃れたいのかリキッドが両足を緩くバタつかせる。
シーツを掻く衣擦れの音、リキッドの減らない口、熱っぽく不規則に乱れる吐息。
どれを取ってもこちらの欲を煽る材料にしかならず、内心では舌を巻いた。
その上、解きほぐした内壁が指に絡み付くように蠢くものだから堪らない。
「やべェな…」
リキッドには聞こえないよう小さく小さく呟いて、気取られないようゆっくりと指を引き抜く。
「ッ…あ、ぅ…」
後ろから事に及んでいるために、顔が見えないことが逆に幸いしたかも知れない。
指に絡み付いた体液で適当に自身を濡らし、リキッドの足を軽く持ち上げて先端を後腔に宛がう。
ひく、と収縮した入り口の感触に思わず喉が鳴った。
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