本棚1―1
□バスタイム
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(特戦期)
休暇のために訪れた、久々の本部。
DVDでも見ながらゆっくり過ごそうかなとワクワクしながらタラップを降りる。
しかし、ラスト一段!というところで突如背後から伸びてきた腕に抱え上げられ、両の足は地面に着くこと無く虚しく空を蹴った。
「んなぁ?!」
「リッちゃん捕獲ぅー」
ハロー、獅子舞様。
グッバイ、俺の休暇…!
「助けてグー●ィー!!」
「あーうるせー!このまま本部ン中を歩き回られたく無かったら、黙って着いて来い」
それは恥ずかしすぎる…!
蒼白になりながらコクコクと頷いたら、やっと降ろされて両足が地面に着いた。
…まあ、その場で押し倒されなかっただけよしとしよう。
やりかねないから、このオッサンは。
そんなことを考えながら、トボトボとハーレムの背中を追いかけて歩いた。
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「ひっろ…!んで豪華!何これ!」
「豪華なのは俺の趣味じゃ無いんだがなァ。阿呆面下げてねェでさっさと入れ」
連れて来られたのは本部内にあるハーレムの自室だった。
余りの豪華さに足を踏み入れるのをためらう程で、痺れを切らしたハーレムに促されて漸く一歩を踏み入れる。
「何部屋あるンすか」
みっともないとは思ったが、キョロキョロとしながらそう尋ねた。
「あー?応接兼執務室だろ、ここな。あとプライベート用に別のリビング、寝室、ゲストルーム、ちっこいキッチンに、バスルーム…そんぐれーかな」
「多ッ!俺の部屋なんかワンルームなのに」
指折り数え出したハーレムと一緒になって数えていたが、余りの待遇の違いに仕舞いにゲンナリしてくる。
「個室があるだけマシだろーが」
「まあ、そうですけど…」
一般の団員は2人から4人の相部屋で、個人的な自室が与えられているのはごく一部。
その中でも特戦部隊の隊員とくれば破格の待遇なのだ。
「さてと、風呂入ってくらァ。お前、その辺で適当に寛いどけ」
「えっ?!」
連れて来といていきなり放置かよ!
しかもこんな豪華な部屋じゃ落ち着かないし、驚いて思わず声を上げたら、ハーレムがニヤニヤしながら振り返った。
「何だァ?一緒に入りてェってか」
「ちっげーよ!落ち着かないだけだ!」
「なら尚更じゃねェか。入るか?一緒に」
どうせ入るんだし同じことだろ、と付け足されて言葉に詰まる。
確かに、そうだけど。
「返事が遅ェ!風呂行くぞ、オラ!」
「うわっ、ちょ、おーろーせー!」
言うが早いか担ぎ上げられて、結局バスルームにまで連れてかれた。
おまけに着ているもの全て剥ぎ取られて先に放り込まれるし、どこまで自分勝手なんだこのオッサンはっ!!
だがそんな不機嫌さも、バスルームを目の前にしたら、吹き飛んだ。だって、だって!
「バスタブが猫足だァ!」
すげー、映画に出てくるバスルームみてー!
しかも用意されてたのバブルバスだし、何これ何これ。
「うっせーぞ、はしゃぐなガキが」
「いいなァ、俺の部屋にも猫足バスタブ欲しいっ!こんなので毎日風呂入りたいッッ」
「ココに入りに来りゃいいだろ」
「えっ、いい、ン、ぅっ?!」
いいンすか、と最後まで言えなかった。
後からバスルームに入ってきたハーレムに顎を掬い上げられ、その唇を塞がれたから。
「ン、ふあ…っ、たいちょ…」
角度を変えながら唇を啄まれ、それが心地良くて、ねだるようにハーレムの背中に腕を回す。
すると応えるように歯列を割って舌が挿し込まれ、たっぷりの唾液と共に口内がゆっくりとかき回された。
「は…、やたら積極的だな、どうした?」
つう、と糸を引いて離れていった唇が名残惜しい。
「ぁ、ふ…、分かンねー…ケド、いま…スゲー隊長が、欲し…ぃ…」
心臓が早鐘の様に打つ。
本当に、どうしちゃったんだろ…。
「風呂あがるまで待てねェか」
「まて、ない…っ」
「そォか」
「あ…っ」
向かい合ったまま抱き上げられて、思わず四肢を絡めてしがみついたら歩きにくいと笑われた。
それよりも、既に緩く勃ち上がっていた自身が腹の間で擦られて気持ちが良い。
「たいちょお…」
「急かすな。よっ、と…」
フワリと身体が浮いたかと思ったら、ハーレムの腕に抱かれたまま暖かい湯に包まれた。
「熱くねェか?」
「んーん…丁度いい…」
広いバスタブは2人で入ってもまだ余るほどで、つくづく感心してしまう。
溢れかけた湯が湯船の縁でぱしゃりと音をたて、それを合図にしたかのように再び唇が重ねられた。
「疲れてっから感じやすくなってんのかもな、お前」
「ゃ、う…っ」
触れるだけのキスにうっとりとしていたのも束の間だった。
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