本棚1―1
□ロリポップ
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(特戦期)
飴が、と言うか甘いものが好きだ。
今宵も自室で報告書と睨めっこしながら、既に棒だけになったロリポップを舐めていたら、案の定暇を持て余したハーレムの襲撃を受けた。
「まァたそんなもん食ってんのか」
「いーじゃん別に、美味いし」
何より安いし!
棒をゴミ箱にシュートして、次はどれにしようかと袋の中身をごそごそと探る。
「俺にも1個くれ」
「えー?ヤです」
「いいじゃねェか、減るもんじゃなし」
「いや減るだろ確実に!…しょうがねーなァ、もう…」
そう言いながら袋を引っ掻き回していたら、小さな赤色の飴玉が目に入った。
透明な包みには何も書かれていないので何味かは分からなかったが、まあいいだろうと開けて取り出す。
「はい、隊長」
「あーん」
「うわっ、何甘えてンすか気色悪ィ!」
「てンめ、犯すぞコラァ!!…あ」
があっ!とハーレムが口を開けたところにすかさず飴玉を放り込んでやると、途端に黙り込んで舐め始めた。
こういう妙に子供っぽいところが可愛いと言うか何と言うか。
「何味だった?」
「んー…、桃…じゃねェな…」
口をもごもごさせて考え込んでる様子が可笑しくて、つい吹き出してしまったら、頭を小突かれて抗議された。
「分かんね、おい、リキッド」
「ハイ?…っちょ、ン…ッ!」
呼ばれて振り向いたら、いきなり顎を掴まれて口付けられた。
舌と一緒に口内に飴玉が押し込められて、甘い香りが口一杯に広がる。
暫くの間そうやって飴玉ごと口内を舌で掻き回されて、味も何もあったもんじゃない。
何とか飴玉をハーレムの口内に押し戻して、息も絶え絶えに唇を離した。
「…で、どーよ。分かったか?」
よくもまあいけしゃあしゃあと。
でも、味は何とか分かった。
「さくらんぼ、だ…っ」
「ああそォか、確かに言われてみりゃそうだなァ」
言うが早いか、ガリッという音がして飴玉が噛み砕かれたのにびっくりした。
「噛むとかありえねー…」
「ンあ?…あー…俺、飴とか噛んじまうんだよなァ、何と無く」
「欲求不満なンすよ、それ」
それを聞いたハーレムがキョトンとした表情を浮かべた後、直ぐに意地の悪そうな笑顔になる。
「不満なんて無ェよ、リッちゃんってば床上手だしぃ?」
「っだー!!言うと思った!!」
だって、仕方ないじゃないか。
飴を噛んだら欲求不満だなんて俗説、信じてる訳じゃないけど、気になる程度には…そりゃ、気に…なる。
「もー1個くれ」
「ぜッッッてぇやらねー!!てめぇの指でもしゃぶってろセクハラエロオヤジッ!!」
「………ほォ。隊長様に向かっていい度胸してんなァ…、クソガキが」
やべ、怒らせ…た…?
「やーっぱ欲求不満かもしれねェわ、リキッド。…覚悟しとけよ」
「ぅぐ…ッ」
首根っこを掴まれたかと思うと、ベッドにうつ伏せに押し付けられて息が詰まった。
マズい、完全にキレてる…!
「泣き喚いても、今日は許さねェからな」
「ゃ…っ」
下着ごとズボンを剥ぎ取られ、晒された下半身が外気に震える。
つ、と腰辺りから背骨をなぞった指がいきなり後腔の入り口に触れて、背筋が強張った。
「ビビらなくても、いきなり突っ込みゃしねェよ。イイコにしてりゃな。それに…」
「ンぁ…、あ…!」
「どうせ直ぐに濡れてくるしなァ?」
ハーレムの指が入り口の周囲をなぞったり、軽く押したりを繰り返すだけで腰が熱くなってくる。たったそれだけの、刺激なのに。
「ひゃう…ッ」
「もう溢れてきてやがる。大したもんだ」
浅く指先を挿れられ、小さな水音が聞こえた。
「あーあー、ヒクついてンぞ?早く銜えたい…ってな。…淫乱」
「ぃ…ゃだ、隊長…ッ」
そんな風に仕込んだのはハーレムなのに。
自分だけのせい、じゃない。
とにかく悔しくて、恥ずかしくて。涙を堪えながらシーツを握り締めた。
「あ、そォだ」
突然ハーレムが身体を離したかと思うと、次の瞬間、頭の上からバラバラと何か小さいものがたくさん降ってきた。
なに、とよく見れば、それは袋に入っていた色とりどりの飴で。
この状況で何で飴を?と思ったが、次のハーレムの言葉に頭から一気に血の気が引く。
「食わせてやるよ。淫乱なリキッドは早く銜えたくてしょうがないみてェだし…?」
ハーレムが、冗談抜きで悪魔に見えた瞬間だった――…。
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