GIFT

□フラグはきっちり回収します
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それは間違いなくキスだった。
しかもリキッドの方から、である。
飛空艦の通路でやたらテンション高く呼び止められたかと思いきや、飛び付く勢いで抱き着かれ、結構ディープなキスを喰らった。
ただ余りにも想定外に過ぎ、リアクションをし損ねてしまったことが、リキッドにとっても予想の範囲外だったらしい。

「や、ほら、オレ金無いし、まあ隊長のせいで金無いんだケド、ってそうじゃなくて、あの、なんてゆーか、その」

しどろもどろで視線を明後日へと泳がせている、その顔は真っ赤に染まって。
まあ、またどうせ妙なドラマか映画だかを見て影響されたのだろう。
何せ思春期真っ盛りの子どもだ。要は『恋人』らしい事をしてみたかったに違いない。それは、容易に理解できた。
そうこうしている内に、リキッドはといえばこちらが未だリアクションを返さないことが段々と不安になってきたらしい。

「隊長、あの」
「あン?」
「やっぱ、嬉しくない、す、か?」

ショボンとした態度はまるで、そう、犬だ。
コイツに犬の耳と尾でもついていれば間違いなくヘナリと垂れ下がっているだろう。

「嫌そうに見えるのか?」
「え、じゃあ」

今度は褒められた犬よろしく、ぱあっと表情が明るくなる。まったく忙しないやつだ。

「でもな」
「うん?」
「オメーは例えば、プレゼントを貰ったら、どうする?」
「そりゃ、お返しを――、あ」

さすがに気付いたか?自分が墓穴を掘ったってことに。
ま、いつも掘ってんのはこっちだがな。

「俺ァ、英国紳士だからよォ。しかも折角のリッちゃんからのプレゼントだろ、キッチリと礼をしなきゃと思うワケだ」
「プププ、プレゼントっても、別にそんな大したモンじゃ、」
「いやぁ? 大したもんだぜ、恋人からのサプライズなキスってのは」

“恋人”の部分をワザと強調しながら、廊下の脇へと身体ごと追い詰める。
今思い返せばコイツからのディープキスなど貴重な体験だ。なにせ普段はただ触れるだけのキスですら、真っ赤になっているようなお子様なのだから。

「お、お気持ちだけで結構っす!」
「やなこった」
「ぁ、ッ、」
「たぁっぷり、キモチ良いのやるからな」

結局、こうして触れても逃げないあたりリキッドも満更ではないのだろう。
任務地に向かっている途中だが、そんなことはもうどうだって良かった。

「続きは、任務が終わったら」などとは言わない。今すぐだ。そして任務が終わったら、もう一度だ。
正直なところ己の下半身が一番思春期真っ盛りな気がするのだが、そこはご容赦願おう。

「ちょ、ココ、廊下……ッ」
「どうせ誰も来ねえよ。気遣い出来るからな、アイツらは」

そう言いながら、甘い声を上げるリキッドの唇に噛み付いてやった。



【やってることが全然紳士じゃないっ】

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