GIFT

□かわいそうなひと
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抱けと命ぜられ、ただ従う。その繰り返し。

他の2人はたまに役目が入れ替わっているようだったが、自分の処にやって来るハーレムは決まって「抱け」と告げるのみ。
自分が彼に与えるそれは、快楽よりもむしろ苦痛の方が勝ることが最たる理由であるらしかった。
けれどもいつからだっただろう。
「……隊長」
慰める為だけに抱いていた、その身体だけでなく心までもを独占したいと考えるようになったのは。

「ひっ、ぁ、ア!」
ハーレムが跨る格好で繋がっていた、その揺れる腰を力任せに掴んで強引に突き落とす。
途端、弓形に背を反らせて悲鳴を上げたハーレムの欲が、何度目かの絶頂を迎えて弾けた。
「ぁぐ、ぅ……んンッ」
苦しさに歪む表情。当たり前だろう。自分の、人間離れしていると言っても過言ではない巨大な欲の塊を、余すところなく腹の内に飲み込まされているのだから。
だがオーガズムに達したということは、それが最早彼にっとっての快楽になってしまっているということ。
「……満足、されましたか……?」
顎が震える程全身を引き攣らせているハーレムの背を撫ぜながら、問う。少し待ってみても乱れた呼吸は落ち着く気配が無い。
限界はとうに越えていた筈だ。なのに彼は。
もっと、と、浮かされたように繰り返し呟いて唇を重ねてくるものだから。今度こそこちらの理性が限界を迎えた。

「たい、ちょう……ッ」
汚れたシーツに押し倒した身体は止まらない痙攣にのたうつ。暴れる両の足を限界まで開かせ、加減を知らぬ獣のように腰を振った。
喉が裂けそうな程に泣き叫ぶハーレムに構わず、抜ける寸前まで欲を引き抜いてはまた穿つ。身体がずり上がって行くくらい強烈に、何度も、何度も。
上質なベッドのスプリングが、まるで安宿のものであるかのようにギシギシと軋んで喧しい。それでも、荒い息を吐きながら目の前の獲物を心のままに貪った。
「ッ、ッ!」
陸に打ち上げられた魚のように、はくはくと震える唇からは声にならない呼吸音だけが押し出されてくる。
欲が出入りするたびに赤い肉が捲り上がる後腔が、何度もドライで達したが故に萎えて揺れる陰茎が、感じ入って血色良く尖った胸の飾りが、どれも卑猥で。そしてそんな有り様がただ、愛おしい。
そう、愛おしいのだ。
「……ハーレム隊長」
陶然と名を呼びながら身体を前に倒し、泣き濡れた瞳が焦点を結べていないことを確認してから、薄らと開いたままの唇に口付けた、
「――!?」
筈、だった。

「……はは」
乾き、掠れた笑い声が、しんと静まり返った空気を震わせる。
寸での処で阻まれたのだと気付いたのは、後頭部に鈍い痛みが走ったからだ。髪を掴んでいる指の思いの外強い感触に一気に血の気が引く。
この人は自らキスをしてくることはあっても、その逆は無かった。
ロッドや、マーカーには許すのにだ。だから拒絶されぬよう、理性を根こそぎに奪ったつもりだったのに。
「……な、ぜ」
打って変わって冷たい汗が背中を滑り落ちる。
未だ繋がったままであることなど、とうに忘れていた。
「おまえ、よォ」


本気だろう?


ああこの人は、解っていてその上で。
「哀れなお人だ……」
「おまえもな」
余りにも綺麗に笑うその人に、泣きたくなった。

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