GIFT

□求める者、与える者
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夜の浜辺。
周囲には自分たち以外に生き物の気配は無い。夜行性の者の遠吠えが、それこそ微かに聞こえる程度だ。

「どうした。やたら積極的じゃねえか、リキッド?」
そんな、静かな浜の砂の上で。仰向けに転がったハーレムの腹の上に泣きそうな顔をしたリキッドが跨っている。最近随分とそちらの方はご無沙汰だったのだが、この永遠の二十歳は手を出されないことにそろそろ焦れたらしい。
浜で出会ったのは偶然だが、そこから押し倒されるまでは早かった。初めはあの胡散臭い薬屋にタチの悪いイタズラでも仕掛けられたと思っていたのだが、それにしては躊躇いがちのリキッドの手付きに、これが彼の意志であると悟るまでそう時間は必要ではなく。
「たい、ちょう……」
だから、喜んで誘いに乗った。
服を脱ぐのを手伝ってやり、自らの後腔を慰めるのにも手を添えた。準備が整うまで、辺りには静かな波の音が満ち、それにやや掻き消されるようにして互いの息遣いだけが漏れ聞こえ、いっそ荘重ですらある。
中世ヨーロッパの貴族は初夜の床の完了を以てして婚姻を認めたというが、そういった類の神聖さだった。それだけリキッドが真剣なのだ。だから、ハーレムも応えた。

「ぅ、あっ」
ずるりと音を立てて指を抜いたリキッドが、刺激に身体を跳ねさせた拍子にバランスを崩しそのまま倒れ込んでくる。耳元で荒く吐き出される息が熱い。
「……自分でやれるか?」
背中を擦ってやりながらそう問えば、小さく頷いたリキッドが腕を震わせながら身体を起こす。その際に人の弱点をわざと引っ掻いていった辺り、まだ少し余裕はあるらしい。常ならばやり返してやるところだが、今宵のリキッドの積極さが本当に珍しかったので好きなようにさせた。
平静を装うには、やや辛い刺激だったが。
「……あは、隊長のも、準備バッチリじゃないすか」
「そりゃオマエ、こんだけエロい姿見せてくれたらなァ?」
恐らく本人は無意識であろう、優艶な手付きで欲塊をなぞり上げられて益々平静をたもつのが辛い。
しかしそんな心配はすぐに無用になった。あまり間を置かずにリキッドが勢いよく腰を落とし、その体内へと迎え入れられたからだ。
「――ッ、う、あ!」
「……っ」
一応、ここが屋外であることを憚ってか声を抑えてはいるようだが、それでも漏れる嬌声が夜の空気に溶ける。
「んッ、く、ぁあっ」
「いーい眺め……」
胸の上に突っ張った手で上体を支え、懸命に腰を振って抽挿を繰り返しているリキッドの動きに合わせて時折軽く突き上げてやれば、その度に怒ったような目を向けられた。邪魔をするなとでも言いたげに。
「そんなに気持ちいいか」
「う、んッ、」
どれだけ快楽を、この繋がりを待ちわびていたのやら。求めるものを享受してなお恍惚とした表情を浮かべるリキッドが、泣きながら、啼きながら。
全身を震わせやがて達して。
しかし。
ハーレムも、もう限界だった。

「あッ?!」

隙を突いて身体を起こし、リキッドを砂上に押し倒し返す。高い悲鳴をあげかけた口を手で塞ぐと、思うさまに強く腰を打ち付けた。
息が苦しのか、それとも腹の方か。口を塞ぐ腕をリキッドがしきりに掻き毟る。何か言いたげな目が月明りに濡れて瞬くが、意に介さず穿ち続けた。
「まだまだイケるだろォ? オメーの方から乗っかってきたんだからよ」
そう皮肉って笑いながら。

これ以上出来ない、なんて。
今夜ばかりは言わせないと耳元で囁いてやったらば。
リキッドは漸く諦めたように腕を背に回してきたので、ハーレムは満足そうに笑ってその唇にキスをした。


【かわいいやつ】

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