GIFT

□消せない鎖
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Gは初め、血濡れのハーレムを見て怪我をしているのかと焦った。

暇だと言って出撃予定の無かった戦場にフラリと出掛けて行ってしまうことはままあれど、そのまま戻って来なかった事はこれまで一度も無い。
ただあても無く適当に、散策気分でウロウロするものだから時折迷子になることがあった。そう、正しく「迷子」だ。そんな時は「迎えに来い」と連絡がある。己が迷子になっているなどとは当然認めない。
だから、今回もそうだと思っていたのだが。

「っ、隊長……?」

顔を合わせるなり無言でそこら中に死体が転がっている地面へと突き倒され、体の上に乗り上がってきたハーレムが血に汚れた顔で笑う。止める暇も無く股間を掴み上げられ、呻いたその唇にかぶりつかれて。
そこで漸くハーレムが抱かれたがっている事を悟ったものの、帰艦してからでは駄目なのかという問いに答えは無かった。



「は、あ……っ」

手袋を投げ捨て着衣をおざなりに乱したハーレムが、後腔いっぱいに欲塊を咥えこんで自ら腰を振る様を下から見上げる。場数など数えきれぬほど踏んでいるだろうにこれほど欲に対するコントロールが利かなくなっているのも珍しい。

「んッ、ぅあ……!」
「……大丈夫、ですか」

悦所を掠めたのか、びくりと硬直した体がそのまま倒れ込んできたので受け止める。広がるに任せて散らばった髪からも血の臭いがした。一体、どれだけの血を浴びたのか。

「く、ふ……っ」
「それではいつまで経っても終わりませんよ……?」
「ひアッ、ぁ……ァア!」

物欲しそうな目を向けてくるハーレムの腰を掴んで勢い良く突き上げる。体を繋げるようになった頃に比べると随分と慣れた。それでも規格外の質量の欲塊を腹に収めるには、こんな状況では当然準備も何も足りたものでは無く、感触から言ってハーレムの後腔は随分と傷付いているように思う。

「いッ……! ぁ、ぐう……ッ」

それでも終始無言のまま、口をついて出てくるのは嬌声か呻き声ばかり。体は繋がっているとは言え意思の疎通も叶わない性交など、只の処理と変わらない。分かっていてハーレムの望み通りに体を貸してはいたが、そろそろ主導権は返して貰おうか。
(……残党が居ないとも限らないからな……)

「ひ、あァアあっ!」
「終わらせ、ますよ……っ! 制圧は完了していますが、戦場のド真ん中、ですから……っ」

ハーレムの腰を両手で引き寄せ、その反動を利用して上半身を起こす。そうして向かい合わせで膝上に座る格好になったハーレムを思うさまに暴いた。

「あ、が……っ」

自重も加わって相当苦しいのだろう。反らせた喉に声を詰まらせ、それでもなお腰を振ろうとする様子はいっそ健気でさえあった。
うつろに溶けた視線をさ迷わせながらも縋り付いてくる両腕が、唯一の意思表示のようにも見えて。

「かは、ぁ、あハッ、……っは、」

開きっ放しだった口から掠れた吐息が押し出される。呼吸が上手く出来ていない。揺すぶりながら、解きますよ、そう言って結わえられたままだった首元のスカーフタイに手を掛ける。少しは楽になる筈だと解いた白い布、しかしその下から。

「こ、れは……」

現れたものを目にした途端、静止せざるを得なかった。

赤く鬱血した何本もの、指の痕

正面から飛び付かれて思い切り締め上げられでもしたのか。だから、頭から血を被ったようになっていたのか。
ハーレムが自ら付けたものではないと明らかに分かるそれに、触れようとしてやめる。それまでずっとうつろだったハーレムの目がこちらをはっきりと向いていたからだ。

「……、G……?」

一瞬の間のあと、何度かまばたきをしたハーレムが初めて名を呼んだ。震えていた。
血で興奮しただけでこうはなるまいと薄々感じてはいたが、彼にこの痕を付けた敵は最も触れてはいけない部分に触れ、人のかたちも残さず死んだに違いなかった。

「G、ィ」

不安そうな声で再度呼ばれる。
はい、と応えたあとに意を決して問うた。「あなたは今、誰に、抱かれていたのですか」と。
そうすれば当然とでも言いたげに返ってきた答えは。

「あにき」

どちらの、とは聞かずとも知れる。
それ以上何も出来ない自分に腹が立った。


【消せない鎖】

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