GIFT
□身を以て知るという事
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「あ、は……っ、」
駆け出しの軍人だった頃から何度となく男相手に足は開いてきた(無論その逆も)。
別にゲイという訳ではない。女日照りが当たり前の戦場ではままある事で、珍しくもない。
「んっ、ぃ、ああっ!」
だから普段は抱いているリキッドに今現在抱かれているという現実も受け入れられないことは、ない。だが。
「や、待っ、これ、これヤバ、ぃ……っ」
自分の体が『女』になってしまっている状態で抱かれているというのは、流石に頭がついて来なかった。
「性転換が出来るはずなんですが」と謳う高松の怪しげな薬でリキッドに悪戯を仕掛けようとして失敗し、誤ってその薬を飲んでしまった己の体が変化したところまではまだ良かった。慌てふためくリキッドの反応が面白かったからだ。
だが、そこから調子に乗って『女』を武器にしたのがいけなかった。まだ十代のリキッドの、雄としての本能を正しく刺激してしまったのが全ての始まりで。
「ひ……っ、ぃ、た……ッ!」
痛いと思わず口にしたものの、それが擦られている部分なのか奥深くで突き当たっている部分なのか、それ以前にそれが本当に痛みなのか、判別が付かない。
それでも悲鳴も怒声も聞く耳を持たず、目の色を変え、息を荒くして女の体になった己を暴くリキッドの勢いは全く衰えなかった。
「リキ……っも、と、ゆっく、りィ……!」
揺さぶられながら、切れ切れに叫ぶ。
まともに喋れない。男を受け入れるのに相応しい器官で得られる感覚が、快楽が、こんなに強烈なものだなどとは。なまじ男同士の性交での、受け入れる感覚と悦の記憶があっただけに余計に混乱してしまう。
聞き慣れない高い声も、己の口から発せられているというのに混乱に拍車をかけていく。
「あ……っ?! や、だっ、リキッド!」
突然、両膝裏を抱え上げられ抽送の速度が増す。限界が近いのか。ハーレムは今度こそ甲高い声で泣き叫び、リキッド、と何度も必死に名を呼んだ。
「――なに、?」
漸く口を開いたリキッドだったが動きをちっとも緩めないどころか、無駄に膨らんで律動からは少し遅れて揺れている胸に音を立てて吸い付かれ、紡ぐはずの言葉が嬌声に取って代わられてしまう。
「んくっ、ぁ、か……ッ、中に、は、アッ」
それでも何とか叫んだ。
このまま、女の体のままリキッドの限界を迎え入れてしまったら。元の体では絶対に起こりえないことが、万一起こってしまったら。
血の気が下がる思いだった。
そうして叫んでいる間にも散々に突き立てられ、掻き回され、耐えれば耐えるほどガクガクと震える事しか出来ない弱い体が憎らしくて情けなくて。
「ンうっ、ぅ、くふ、ッ」
ただでさえ酸欠に近いというのにいきなり口付けられ、最早どうにも出来ないのかと強く目を瞑った。今の自分では力で抗うことは不可能だ。――その時。
「だいじょうぶ、だから」
「ぅあっ、ぁ、に、が……っ」
「責任は、とる、よっ」
「ひィッあ、ア!?」
抽送の激しさと速度はそのままに、抱きすくめられて囁かれた言葉に今度は目を見開く羽目になった。
今リキッドは何と言った?
違う、違う。
そういう問題では無いのだ。
もっと根本的に考えろと喚き散らして、出来る事なら殴ってやりたい。なのに。
「隊長、すっげー綺麗」
「ばっ……かやろ! そ、ンな、じゃ、」
「歴代で最高のファースト・レディだって。俺、世界中に自慢する。子供も一緒に」
「な――……」
真剣な顔で言うものだから。
「うあ……っ!?」
「ァ、は……ぁあアッ」
真っ白になる眼前
弾けたような感覚
痙攣する下腹と、足と、何もかも全て
「ッ、たい、ちょう……!」
呻いたリキッドに腰を両手で掴まれ、これ以上距離は縮まらないというのに押し入られたその先が焼けるような熱を孕む。
「ぁ、あ……」
まだ小刻みに痙攣する下腹に震える手を乗せる。薄くなった腹筋の下では、リキッドの欲塊が未だ脈打っていた。そうして注がれ続ける奔流に抗えずにただ、なすがままで行き着いた先には。
「どっちに似たら、うれしい?」
自分でもどうしようもない喜びと、満足感。
重なるリキッドの大きな手が。包み込むようなあたたかいそれが。すべてが。
途方もなく、愛おしくて。
「……どっちでも」
そう言って笑う自分が居た。
【身を以て知るという事】