GIFT

□これもまた、日常
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「リッちゃん、ジャムあるよ。リンゴの」

「あっ、もらう!」

プレーンのベーグルを持って窓の近くをウロウロしていたリキッドに、そう声を掛けたのはロッド。

「いいから座って食え、行儀の悪い」

「えー、ベーグルなんだからいいじゃん。映画とかじゃ皆かじりながら歩いてるし」

窓の外の景色に気を取られてはしゃぐ子供を、躾けるのはマーカーの役目。

「……飲み物はカフェオレでいいか?」

「うん! 砂糖いっぱい入れて!」

だがそれも虚しく甘やかすのが、G。

ここ最近定番となった特戦部隊の朝の光景である。基本的に食事は各自の自由の筈なのだが、育ち盛り食べ盛りのリキッドが加入したことにより全員が何となく彼に合わせだし、ついでに世話を焼いているというのが現状だ。
普段特に理由も無くリキッドを虐めの対象にするロッド達ではあるが、特に理由も無く甘やかす事も多々あり、それでうまい具合に均衡がとれていた。

「そういや隊長は?」

「まだ寝てるんじゃない?」

「昨晩は一緒では無かったのか」

「うん」

「そーいやリッちゃん任務のあとすーぐ寝ちゃったもんねェ。ってことは隊長、夜這いにも行かなかったわけだ」

「よば……っ、あ、朝から何言ってンだよ!」

「…… だがそろそろ起きていただかねば」

「そうだな。目を通して頂きたい書類も溜まっていることだし」

「じゃあ、俺起こしてくるー」

ベーグルの最後の一欠片を口に放り込みながら、リキッドが座ったばかりの席を蹴ってパタパタと走り出す。それは余りにも自然な流れだったが、ふとロッドが口にした一言にその場は何とも言えない空気に包まれた。



「――アレ、もしかして戻って来ないんじゃない?」

リキッドが、隊長の朝食になる――
誰も口には出さないがきっとそれが正解となるだろう。

「書類整理は午後から、だな」

マーカーが静かに呟くと同時に微かな悲鳴が遠くに聞こえる。全員が、日本式に合掌した。
そして何となく口を揃えて発したのは。

「ごちそうさまでした」

これもまた、特戦部隊の日常である。





これもまた、日常

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