GIFT

□聖なる日の性行為は聖行為か否か
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一言で表すなら、「チョロい」
これに尽きる。

俺の見え見えの下心に気付いている癖に、リキッドは決して弱くはない度数の酒を少しずつではあるがあおっていた。
折角のクリスマスだ。コイツにもそれなりにアレコレ期待する気持ちがあったのだろう。
そこに、つけ込んだ。


「隊長ってば、こォんなオッサン趣味、あったんだァ?」

「言っとくが強制はしてねェからな」


連れ込んだホテル、そのベッドの上で。
仰向けに寝転がった俺の、腰の辺りに跨っているミニスカートのサンタクロース。
その衣装に包まれたリキッドは、既にとろけた笑みを浮かべていた。
そう、強制はしていない。
衣装が入った箱を手渡しただけだ。
あとは全部リキッドがひとりでやった。
しかもわざわざ「着替えてくるから」とバスルームに引っ込み、恥ずかしがるどころか「どうだ」と言わんばかりの笑顔で再登場したものだから、己が渡した衣装とは言え夢かと思ってしまったくらいだ。

正直に言おう。
実に、良く似合っている。

長めの袖からちょこんと覗く指先だとか。
ワンピース状のスカートと、膝上までを隠すニーハイソックスとの間に出来た俗に言う絶対領域だとか。
何事か喋るたびにゆらゆらと揺れる帽子の先のぼんぼりだとかが。
リキッドに、実に。

こどもくささの抜けない顔立ちがそう思わせるのか、仕草によるものか、いやそんなことはどうでもいい。


「似合ってる」


とにかく。
それしか言えなかった。


「変態ィ」


まあ仕方ない。
そう言われるのは分かっていた。


「どっちがだよ」


言いながらスカートを捲り上げれば総レェスの、それだけを見れば可愛らしいショーツが顔を出す。
女物に見えるが、その手の趣味の男性向けに作られたものなので、丸みの少ない男の骨格でも中々に映えていた。


「準備万端って感じだな?」

「ひゃんっ」


そのショーツの前部の盛り上がりをピンと指で弾いてやれば、何ともこちらの股間を直撃するような声が上がる。
跳ねたリキッドの腰の動きはそのままダイレクトに俺にも伝わってきて、それが、スイッチになった。


「ここまで煽ったからには、もう泣こうが喚こうが知ったこっちゃねェ、ぞっ」

「っ、あ」


体を横に転がし、リキッドからマウントを奪った俺は、抵抗も出来ないその一回り小さな体をうつ伏せにして抑え込んだ。
そのまま腰の下に手を回して両膝を立たせれば、尻を高々と突き上げた何とも悩ましい恰好が出来上がる。
ふわりとしたスカートの裾が尻をほぼ隠している分、逆に卑猥だった。


「コッチの準備はどうだァ?」

「う、ひゃあっ」


下着越し、後腔に親指で触れる。
まだくすぐったいだけなのか素っ頓狂な声を上げるリキッドに構わず、そこにグイグイと何度も親指を押し付ければ、やがて湿り気を帯びてきて。


「ちょっと弄っただけでコレか。随分とヤらしい体になっちまったモンだな」

「ン……ッ、誰のっ、せいだと……!」

「ハイハイ俺の所為だよ。だから責任とって気持ち良くしてやろうな?」

「や……っ、ソレの上からとか、やだっ」

「文句の多いサンタなこって」


布越しが嫌ならばと、布をずらして直接後腔に触れてみればそれでも「嫌だ」と首を横に振る。
しかしこの場合、その仕草は肯定の意味でしかない。本音は逆だ。
実際、逃げもせずむしろリキッドの後腔は喜んで俺の指を食んでいる。
指先を腹側に向かって軽く折り曲げ、本番さながらに緩急をつけて抽送してやれば、溢れた分泌液が太腿を汚していく始末で。


「ふ、アッ、あ……ぅんンッ!」

「――お。指だけでイッたか」

「ッ、あ、も……隊長、ぉ……っ」


枕に半分埋もれたままの顔がこちらを向く。
赤い帽子は既に横に落ちてしまっていた。


「分かってる」


足りないのだ、指だけでは。
今のも軽く達しただけで、リキッドが待ちわびているような溺れるほどの快楽にはまだ遠いはずだ。
己が仕込んだとはいえ、何とまあ、こと情事に関しては淫乱な体に育ってしまったものである。
そのことに満足気な笑みを浮かべながら、ゆっくりと指を抜いた。
リキッドの残滓が、指先と後腔の間に名残惜しそうな銀糸の橋を作る。
その橋は、リキッドが「まだか」とでも言いたげに尻を揺らしたせいで、切れて落ちた。


「ん……っ」


そんな悩ましげな様子を見せるリキッドの、欲しがっていたものを後腔にあてがう。
鼻に掛かったような妖艶な吐息があまりにも歳に似合わなさ過ぎて可笑しくて。


「んあ、ぁ、ふ……ぅッ」


けれどそれをもっと聞いていたくて、今にも暴発しそうな欲塊をいそいそ取り出し、わざとゆっくり、ゆっくりと挿し貫いていく。


「ぅ、……く、ぁッ、はァンッ!」


じっくり時間をかけて漸く根元まで飲み込ませれば、スカートの裾を揺らしながら一際甲高く、リキッドは啼いた。


「ふ、あっ、あアッ! たいちょっ、や……っ、はげし……!」

「うっせ、も、お前、エロ過ぎンだ、よっ」


言い訳を吐きながら今度は抜ける程に腰を引き、打って変わって勢いをつけた抽送を始める。
はじめはひたすら腰を打ち付けるだけだったが、やがて伏せるリキッドの背に覆い被さるようにして、まるでセックスを覚えたばかりのような必死さで年甲斐もなく腰を振った。


「ひ、ア、たいちょ、隊長……っ! やだっ、これ、やだ……ァアッ」

「泣いても、喚いても、知ったこっちゃねェって、言ったろォが……!」

「ひぁああんっ!!」


リキッドは、バックでされるのが苦手だ。
体内に迎え入れている者の顔が見えないという不安。負担の少ない姿勢ゆえに快感が過ぎるというのもあるだろう。

だが俺は最初に宣言した。
泣いても喚いても知った事では無いと。
だからリキッドが泣きぬれた顔をこちらに向けようとも、震える体を責め立てるのをやめなかった。


「ぃあっ、ア、……っく、イく……! たいちょ、イくぅ、うっ!」

「ん……っ、イっちまえよ……! 後ろだけで、服着たまんまでっ、最ッ高に恥ずかしいカッコでなッ!」

「ッ、て……、だってェ、たいちょお、が、――〜〜ッあ、ぁあアあぁあ!」

「――……ッ、ぐ」


興奮で真っ赤になった耳元に、羞恥を思い出させるような言葉を注げば。
言い訳がましくも意味を成さない叫びを上げながら、リキッドの体は凄まじく痙攣した。
誘発されるようにその体内に欲を叩き込む。


「……あーあー、前も後ろもぐっちゃぐちゃだ。ヤラしいの」

「きもち……わる……、ぇ、あ……っ?! や……、なんでまた、かたく……ッ」

「一発で済むかよ、オラ、このままもっかいヤるぞっ」

「ふああっ!」


精液でグチャグチャになったリキッドの股間を布越しに擦り上げながら、余韻に浸る間もなく抽送を再開する。
萎える様子すら見せない己の欲塊に苦笑しつつも、ぐぷぐぷと音を立てるリキッドの腹の中を掻き乱し、奥を抉っては浅い所を引っ掻き回して、まさに凌辱という言葉が相応しいような行為を強いた。


「はァッ、あ、アひっ」

「っおい、息、ちゃんと、しろよっ」

「で、き……っ、できな、あ……! も、ぁ、また……またクる……っ、ぃ、イっちゃ、」

「うお、締めんな、くそ……っ」


しかしリキッドの限界は先ほどよりも早かった、無理もない。
間髪入れずの二発目で、敏感になり過ぎた体を持て余したリキッドに絶頂を我慢しろと言うのは、さすがに酷だ。
それに、行為を始めてからそろそろまともに顔を見ていないというのもつまらなく感じてきた。
どうせなら絶頂極めるその顔を真正面から見てやろうと、繋がった所を支点にして、


「ひ、ァ、あーっ!!」


リキッドの体をぐるりと、仰向けに返したら。
下着からはみ出した欲塊の先端から吹き上がった白い精液が、赤い衣装の上に点々と、水玉模様を描いてそして。


「ぅ、おい?! てめ……っ、なんつータイミングで……!」


そのままリキッドが気絶した。
文句を言える立場では無い事は分かっているが、それでも悪態を吐かずにはいられない。


「…………」


たっぷり十数秒考え込んだ俺は、無言のまま気を失ったリキッドの体で腰を振った。そしてそのまま、中にありったけの情けなさを吐き出して。

まだ酔いがさほど抜けていない様子だったから、暫くすれば目覚めるだろう。
それまでに風呂にでも入れてやるかと、少し冷静になって改めて組み敷いていたリキッドを見下ろせば。


「――どう見ても、サンタをレイプしましたって感じだな……」


ちょっと、申し訳無かった。


【聖なる日の性行為は聖行為か否か】

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