GIFT
□リップクリーム
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どうしたらいいんだろう
どうしたらいいんだろう
さっきから俺はそのフレーズしか頭に浮かばなかった。
「……え、あの……」
「ンッだよ、いらねーのか?」
「いります! ……ケド……」
俺の手の中にある【モノ】
俺の大好きな【あのブランド】の――と言うかヒーローの!
「何でリップクリームなンすか」
「そりゃな……」
「あ……?!」
一度手にしたそれが再び隊長によって奪われる。
キャップが開けられ、広がったのはピーチの香り。一応自分に合わせてくれたのだろうか。
「これを、こーして……」
呆けていると思いの外強く顎を掴まれ上向かされて。もしかしなくても、これって――、
「お前よォ……最近唇荒れすぎなんだよ」
そりゃアンタのせいでここんトコずっと寝不足だったからだ!と声高に言いたかったが、唇に押し当てられたスティックの感触に黙るしかなく。何となく気恥ずかしくなって目を閉じた次の瞬間、
「んっ?! ン――ッ!!」
違うものの感触と言うか、唇の感触。
驚いた所為で開いた唇の隙間から挿し込まれた舌が歯列を割って侵入してくる。
本人よろしく好きに暴れる舌に翻弄され、気が付く頃には腰が抜けそうになっていた。
「ふあ……」
「……これで、キスのし心地が良くなったなァ。ちっと甘ェが」
にやにやと笑う隊長に、もう文句すら言えない。
でも、あのリップクリームは隊長に預けておこうなんて思ってしまう俺が一番どうしようもないんだろうな――
――そんな事をぼんやりと考えながら、俺は隊長の腕の中で目を閉じた。
リップクリーム