本棚1―2
□声
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【特戦期】
「プレゼントだ」
隊長から脈絡無くいきなりそう言われた時点で察するべきだった。馬鹿みたいに喜んで、両手に乗るくらいの箱を受け取って、開けたらばそこに入っていたものは。
「ん、ぐ、ぅう……ッ!」
今現在、俺の口の中。
いや。中、と言うには少し間違いがある。
「ふ、ぅぐっ」
咥えさせられているんだ。猿轡、ってやつを。
実際に「ナカ」にあるのは――
「ンぐっ、ふ、ぅううっ!」
「あー…たまにはこういうのもイイな。すっげェ締まってるぜ、リキッド?」
――隊長の、凶悪に大きな欲の塊。
両足を抱え上げられ挿し貫かれて、でも悲鳴は逃げ場を閉ざされ籠った音を出すばかり。
はじめ両腕は自由だったけれど、口に咥えさせられた猿轡を外そうとしたら途端に後ろ手に拘束されて、今は背中の下で押し潰されそうになっている。痺れて、もう感覚は無い。
「ふ、ン、んンッ――!」
「何だァ? もうイっちまったのかよ」
つまらなさそうな声。
でも俺はそれどころじゃ無かった。
いきなり訪れた絶頂、それによって引き起こされる痙攣の所為でうまく息が出来ない。ただでさえそんな苦しい瞬間なのに、咥えさせられている猿轡が呼吸を阻んで。
「ッ、ッ!」
「……っと、やっべ」
「は――ッア、ぁ、かは……っ」
ひゅう、と喉を鳴らして押し寄せてきた空気に肺を殴られたみたいな衝撃。やっと解放された――そう認識するヒマも無いまま血を吐きそうなくらい咳き込んだ。なのに。
「ひっでェ面だな」
「んあっ、ァ、待……ッはあぁア!」
「やーっぱ、声、聞こえてる方がいい」
呼吸も整わないうちから再度突き上げられて、治まらない絶頂感に追い打ちが掛かる。揺すぶられて、苦しいのか、気持ち良いのか、もう訳が分からない。眩暈がした。
「もっと聞かせろや。リッちゃんの、かーわいい、声を、よっ」
ぐうっと奥まで押し入ってくる隊長の欲塊。
ばか、と叫びたかったけれど耳元でそうあんまり嬉しそうに囁くものだから。
俺はもう、存分に喘いでみせるしかなかった。
【俺だって好きなんだよ、アンタの声】