本棚1―2

□悪い大人とベッドの上で
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【2014年リッ誕/特戦期】


『ハンデをちょうだい?』

誕生日くらい――そう言って飲み比べをけしかけてきた子供くささの抜けない愛しい部下は、案の定見事に引っくり返った。
先にこちらが度が強い酒を何杯も煽っていたのだが、結局のところハンデはあまり意味を成さなかったらしい。

「おいリキッド、まだケーキ残ってンぞ」
「んー、食べ、るう」

ホテルの豪奢なベッドの上で、買い与えたぬいぐるみ片手にもごもごとした返事をしたリキッドはしかし、起き上がることも最早ままならないようで。

「たいちょお」
「何だよ」
「あーんして」
「……お前なあ」

リキッドの誕生日を理由に今日一日とことん甘やかしてやると決めた以上、拒みはしないがそろそろ本能が理性に勝りそうで、追い打ちをかけてくれるなとハーレムは頭を抱える。
(どちらかと言うと前屈み、だが)

「ん、あまぁい」
「コラ、ちゃんと食え。口のまわりにべたべたクリームつけやがって」

甘い酒を飲んだ後に甘いケーキ。
ハーレムからすれば胸焼けがしそうな組み合わせだったが、当のリキッドは耳まで真っ赤になった顔をほころばせ、もう何も乗っていないフォークにまだ舌を伸ばそうとしていた。
どれだけ甘い物が好きなんだと呆れ気味に口の周りを右手親指の腹で拭ってやる。そうして指先についたクリームを少し考えてからリキッドの口元に差し出すと、ためらいも無く口に含まれその感触に一気に腰が重くなった。

「ぅ、ン」
「リキッド、」

舌先が指の腹をなぞる。かと思えば爪の付け根あたりをぞろりと舐め上げられ、いとも簡単にハーレムの理性は吹き飛んだ。

「んぅ、うっ!」

上から覆い被さるようにして、己の指ごと唇にかぶりつく。空いていた左手でリキッドが履いていたハーフパンツを下着ごと掴んで引き下ろせば、されるがままであるどころか何も覆うものが無くなった両足をハーレムの腰に絡めてくる始末。

「は、お前、覚悟は出来てンだろうなあ?」
「だって誕生日、だもん。隊長がほしい。いつもよりいっぱい、ほしい、から、あ」

口を解放すれば途端に普段からは考えられないような誘い文句が飛び出し、またその口調が酒の所為でやたらに舌っ足らずなのが堪らない。思わず息を呑んだハーレムは余裕ぶって「まあ慌てるな」と返答したが、その声は情けないことに上擦っていた。


(チップ、だいぶ多めに払わねえとなあ)

ベッドの惨状を思いながら、ハーレムは腹の上に跨るリキッドを下から何度となく突き上げていた。

「あ、ア、たいっ、ちょお……」

余所事を考えていたことで抽送が僅かに弱まったのを、咎めるようにリキッドが切なく啼く。

「悪い悪い、もっと欲しいんだった、なっ」
「ッい、あ、あーっ!」

腰に掛けた両手に力を籠める、その勢いを借りてハーレムは上半身を起こした。最奥を抉られたことと急な体勢の変化を受け止めきれなかったリキッドが、引きつれた悲鳴と共に薄く水のようになった精液を噴き上げながら、絶頂を極める。仰のいたことで眼前に晒された喉を甘噛みしてやれば、汗ばんだ体はまるで雷に打たれたように何度も痙攣した。

「く……っ」
「ぁあ、あ……」

リキッドに少し遅れてハーレムもその掻き抱いた体内へと欲を叩き付ける。もう何度注ぎ込んだか、いちいち数えてなどいない。だが互いに萎える様子もない。若いリキッドはともかくとして、己もつくづく始末に負えないようだとハーレムが自嘲した時、不意に腕の中のリキッドが逃げるようにもがき出した。

「おい、どうした」
「と、……れ……っ」
「あ?」
「トイ、レ!」

切れ切れの言葉を集約すると、小便が漏れそうだからトイレに行かせてくれということらしい。なるほどあれだけ飲んだのだ、尿意を催さない筈が無い。まして腹を中から押されていては我慢も効かないだろう。

「しゃーねえな。抜くぞ?」
「ん……っ、ぅ、う!」

体を抱え上げるようにして、リキッドを貫いていた欲塊を引き去る。楔を失い、すぐには閉じきらぬ後腔からはぼたぼたとハーレムの精液が溢れては、リキッドの太腿を、シーツを白く汚す。

「も、ヤバ、あっ?!」
「待て」
「なに、ッ、や……っ」

身をひるがえしてベッドを飛び降りようとしたリキッドの体を、後ろから捕えた。

「ココでしろ」
「――は……?」

そのまま背後から両足を掴み、幼児に用足しをさせるような格好で抱え上げる。

「う、そ」
「手伝ってやっからよ。誕生日なんだ、粗相くらい許してやる」
「ゃ、やだっ、嫌アッ!!」
「暴れんな。天国見れるぜえ? 多分、よお!」
「――――〜〜ッ、ぐ、ぅ!」

つい今しがたまでぐずぐずに融けていた筈の後腔は尿意を堪える為かキツく閉ざされていたが、宛がった欲塊で無理やりにこじ開けて一息に奥まで進入した。
それでもまだ粗相には至らず、歯を食い縛って体中に力を入れているリキッドの内壁に食い千切らんばかりに締め上げられ、ハーレムも呻く。

「っ、我慢すんな。顎やられるぞ」

ぎりぎりと歯軋りの音すらさせているリキッドの顔の横でそう言うが、首を左右に振るばかりで従いそうにはない。ならばとハーレムはリキッドの腰に腕を回し、ベッドのスプリングを利用して律動を始めた。内と外、両側からの圧迫に耐えきれなかったのか、抽送に合わせてリキッドの欲塊から少しずつ尿が漏れだす。

「っ、ん、ぐ……!」
「リキッド。俺しか居ねえ、俺しか見てねえ。二人だけの秘密だ」
「だから、て、こン、な……あっ」

もう少し。あと少し。
陥落はすぐそこまで迫っている。

「小便に行かせる時間も惜しいくらいなんだ。何たって、俺をいっぱい欲しいっておねだりしてくれたんだし?」
「ぅ、うー!」
「だから見せてくれ、お前も。可愛いトコ、もっと」
「〜〜ッ、ふ、ア!」

リキッドの耳元に甘言を注ぎ込む。
そして、決壊した。

びくりと大きく体を震わせたと同時に白濁混じりの尿が勢いよく溢れ出し、シーツに大きな染みを作っていく。反比例するように引っ込んでいくリキッドの下腹を殊更に優しく撫でながら、ハーレムは満足げに笑みを浮かべた。

「天国、みれたか?」

恍惚と呼ぶに相応しい表情を浮かべるリキッドにそう問い掛けるが返事は無い。
たまに追い遣るようなドライオーガズムとはまた違う、強烈な解放感に囚われているのだろう。目を開けたまま意識を飛ばしているに近い。
だがはくはくと小さく開閉するリキッドの唇の、そのかたちの意味に気付いたハーレムは今度こそ声をあげて笑って言った。

「ハッピーバースディ、リキッド」
(名の前に「淫らな」が付くけどな)

「もっと」――リキッドの唇は、声も無くそう言葉を紡いでいたから。

「朝になるまで、くれてやろうな」


【あと、延泊決定で】

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