本棚1―2

□食べられてしまった!
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【2013年ハロウィン/特戦期】


「赤ずきんが、来ましたよ隊長」

「――あア?」


ドア越しに聞こえたお調子者の声に、ハーレムは唸るような声を上げた。まったく、たった今面倒な会議から戻ったばかりだというのに、と毒づきながらドアを開けたハーレムの、その目に飛び込んで来たのは。


「隊長ー! Trick or Treat!」


なるほど確かに赤ずきんだった。ただし中身は見事に酔っぱらった少年だが。


「お前らなァ、何勝手に俺のリキッドをオモチャにしてやがる。……テメーも毎度毎度遊ばれてンじゃねェよリキッド」

「あのねェ、ロッド達にケーキとかいっぱいもらった!」

「……だいぶ出来上がってンな、オイ」

「かーわいいっしょ? ハイ、あとはお好きにしちゃってくださいねー」

「ッ、おい!」


リキッドと、それから何やら重たいバスケットを押し付けるだけ押し付けて、ロッドは足早に去ってしまった。その得意げな顔に腹を立てつつも、腕の中から酒にとろけたリキッドに笑い掛けられて思わず心臓が跳ねる。

再び室内に、やや性急な足取りでリキッドを抱えたまま戻ったハーレムは、奥にあるベッドルームに辿り着くなりリキッドの薄く開いた唇にかぶりつくように口付けた。
そのまま、まずバスケットをベッドの上に放り、続けて自分もリキッドごと腰を下ろす。我ながら余裕の無い行動だったが、リキッドもリキッドで、嫌がるどころか手足を絡めてくる始末。据え膳食わねば何とやら――そう自らに言い訳をしつつ、邪魔なケープを脱がしてしまおうと口を離した際に【それ】は目に飛び込んで来た。


「おまえ……っ」

「いっ、痛……!」


赤いビロードのケープを破らんばかりの勢いで引き剥がし、露わになった【それ】に――キスマークに指先をキツく滑らせてメイクの類ではないことを確認したハーレムは、リキッドをベッドの上に転がすとますます強くそこを指の腹で押し擦る。


「誰に付けられた? ええ?!」

「や……っ、ま、マーカーに、ィ……ッ! っ、たいっ……痛いぃ……!」

「マーカーだァ?」


やけに痛がるなとは思っていたが、その名を聞いたハーレムは一瞬考えて、慌てて指を離した。


「ガチの火傷かよ……」

「ま、か……が、そのバスケットの中身、隊長に見せろってぇ……」


ぐすぐすと鼻を鳴らすリキッドが指した先にある、バスケットの中から転がり出てきたものを見てハーレムも漸く合点がいく。


「蜂蜜で消毒してやれってか……クソ、危ねェ悪戯仕掛けやがってあのチャイニーズめ」


痛いとぐずるリキッドの頭を宥めるように撫でてやったハーレムは、えらく数のある蜂蜜の瓶の内から小ぶりのものを手に取り蓋を開けた。


「あ……」


途端、ふわりと香った甘い匂いにリキッドがぴくりと反応する。
それを見て瓶を鼻先に近付けてやれば、そろそろと手を伸ばす様子が可愛らしいったらない。


「欲しくて堪らねェって顔だな」

「欲しいー……甘いの、すき」

「ほれ」


指で掬って口元に持って行くと、待ってましたと言わんばかりにかぶりつかれ、もしかしてこの顔をあの3人の前でも晒したのか――なんて考えるとまた少し腹が立ってくる。


「ッ、ん……!」


瓶をサイドテーブルに置き、空いた手でもその黄金色を掬い取って指に絡めたハーレムは、それをリキッドの首の赤くなった火傷部分に押し付けた。
初めは粘度の高かった蜂蜜も、リキッドの体温に馴染むとトロリと溶けて鎖骨を伝う。零れるそれに反射的に舌を這わせたハーレムだったが、甘いものはあまり好みではなかったので、そのむせかえるような甘い芳香に内心で舌を巻いた。


「ぷは、ははっ、吸血鬼みたい」

「……どっちも似たようなモンだろ。これからお前は食われるんだよ、分かってんのかァ? 間抜けなツラしやがって」

「あ、ふ」


火傷の上を蜂蜜越しになぞれば、鼻に掛かった吐息が酷く甘い。甘いならばこちらの方がいいと、ハーレムは更に蜂蜜を追加すると、ゆるゆると指を這わせていった。
そのうち、タンクトップの両胸辺りをぷっくりと押し上げている粒に気付いてにんまりと口元を歪める。


「オイ、なァに硬くしてンだ」

「ひゃんっ」


爪先で片方をぴんと弾くと思った通りの甘い声。


「小せえサクランボみてェだな。ココは火傷してねェだろうなあ?」

「ふあ、あ……!」


タンクトップの裾をたくし上げて現れた2つの粒はまさにサクランボの様に熟れていた。そこにも蜂蜜を垂らし、両の手のひらを使ってゆっくりと塗り広げていくと、びくびくとリキッドの胸が跳ねる。指先で挟んで摘み上げてやると益々大きく反応し、上がる声の淫靡さにハーレムは早くも身震いした。


「たい、ちょ……っ、お願……ッ」

「何だ?」


リキッドの言いたいことは解っている。
先程からもぞもぞと足を擦り合わせ、所在無さ気に躍る両手は腰の辺りを行ったり来たりと忙しない。

触れて欲しいのだ。
ハーフパンツの前を押し上げる、熱に。

解っていてハーレムは一切そこに手を伸ばさない。やがてリキッドの、そのキッチュに彩られた足の爪先がシーツを掻き始める。
それでもハーレムは一瞥をくれてやっただけで、その代わりに小さな瓶に残っていた蜂蜜をリキッドの胸と腹の上にぶちまけた。


「う、や……」

「……うまそうだな……」

「ひィ……ッ」


好まない甘味もリキッドに絡めば何となく魅力的に見えてきて、思わずぷくりと尖った乳首へと舌を這わせてはみたが、相変わらずの甘ったるさに顔をしかめる。


「お前よくこんなの喜んで食えるよな」

「やだ……っ、も……隊長……!」

「まあ待て」


言うが早いかリキッドのハーフパンツに手を掛けたハーレムは、それを下着ごと剥ぎ取ってしまう。前に触れて欲しいとそればかり考えていたのだろう、何の抵抗も無くするりと足先までを滑ったそれを床の上に放った。


「下にゃ蜂蜜ぶっ掛けた覚えはねェんだがよ……なんでこんな濡れてんだ? ん?」

「や……、や……! そっちじゃ、ないっ」

「あン? どっちも似たようなモンだろ。俺に弄られて、アンアン喘ぎまくって、何度でもイっちまうンだからよ」

「うあアッ!」


蜂蜜で濡れた指先を、リキッドの尻の奥、既に濡れた後腔へと突き立てる。
勃ち上がった欲塊から伝った先走りで濡れているのかと思ったが、どうも後腔から溢れた分泌液らしい。


「コッチの方が好きなンじゃねーの? 美味そうに食ってるぜェ?」

「ひ、ア……ッ、そこ……! ――ッ、あ……アあ……!」


指を2本に増やして勝手知ったる悦所を押し潰すように動かせば、動きに合わせて鈴口から精液がとろとろと流れ出してきた。軽く達してしまったのか腰が小刻みに震えている。
きゅうきゅうと締まるソコの感触に舌なめずりをしながら、ハーレムは再びバスケットに手を伸ばした。その中から「RawHoney」とラべリングされた瓶を見付けて、その白く濁った中身をしげしげと眺める。


「生蜂蜜だってよ。欲しいか?」


指の動きはそのままに問うてみるが、リキッドからは甘ったるい声が上がるだけで返事は期待出来そうにない。


「ふあ……っ?! ン、んぅっ!」


一旦指を抜き、瓶の中身を掬い取った指先をリキッドの唇の隙間からねじ込んでそのまま指を抽送させると、くぐもった吐息が鼻へと抜けた。
舌をひと撫でしてから返す刀で上あごの歯列の裏をつうっとなぞれば、飲み下しきれなかったのだろう蜂蜜が唾液と混じり合って口元を汚していく。


「あーあー溢すなよ、下からの方がよっぽどうまく食ってたぞ?」

「や、も……っゆび、やだァ……!」

「ったく、こんな大口開けやがって。いっくらでも食えそうだなァ」

「あ……あ……っ」


再度指を後腔に突き立ててソコを拡げるように、否、実際に拡げながら出来た隙間に反対側の手で掬った蜂蜜を少しずつ流し込んでいった。


「ンく……、ッ、ア、ゃあアッ!!」

「スゲー音……指だけで何回イっちまえるか、今度試してみっか」


蜂蜜に濡れた手でわざとゆっくりと内壁を擦り上げてやれば、目尻に溜まっていた涙の粒を散らしながら体を跳ね回らせる。切なげに寄せられた眉根は、ハーレムが与えている快楽が苦痛スレスレにまで達していることを示していて。


「ふ、ぅうっ」


指で掻き回すたび、欲塊の先端から白濁が途切れることなく吹き上げられていた。それももう既に薄くなってきている。
どうやら普段と違う愛撫の感触が、リキッドを早々に追い上げてしまったらしい。


「リキッド」

「う、や……、ッア……!」


指をそおっと引き抜いたハーレムは、羽織っていたシャツを脱ぎ捨てるとその膝の上にリキッドを座らせ抱き寄せた。クタリと力の抜けた体は蜂蜜にまみれ、触れ合った肌と肌の間でぬるついた感触を残していく。


「たい、ちょ……ン、ん……っ」


力の入らない腕の代わりに縋るような声で呼ばわる、その口に唇を重ねればむせ返るような甘い味と芳香が広がった。


「は……。酒、だいぶ抜けてきたな」

「べたべた……する、ぅ……」

「蜂蜜好きなんだろ?」

「……使い方違うし」

「悪戯されンのが分かってて来たクセに文句言うな、甘いモンも悪戯も貰えて嬉しいだろォが。気持ち良さ気に喘ぎまくってたしよ」


鼻の頭にキスをしながらからかってやれば、顔から火が出そうなほどに真っ赤になっているのも今更だ。


「そういや、あの赤ずきんのケープは自分で選んだのか?」

「……へ? ロッド達に、着せられて……」

「だよなァ。お前、グリム童話の方しか知ら無さそうだもんなァ」

「ア……ッ、ちょ、たいちょ……?!」


気が緩んでいたリキッドの体を片腕で軽く持ち上げて。


「頭巾の赤は、性的興奮を煽る色。狼は男の暗喩。物語で一番古いペロー版のはな、赤ずきんは悪い狼に食われたまんま終わるンだ、よっ」

「――〜〜〜ッ、ア……!? かっ……は……!」


もう片方の手で器用にズボンの前を寛げたハーレムは、現れたそそり立つ欲塊をリキッドの後腔にピタリと宛がうと、その腰を掴んで一息に挿し貫いた。
突然の衝撃に全身を痙攣させたリキッドの後腔は、侵入してきた欲塊を食い千切らんばかりに収縮してハーレムも呻き声をあげる。


「あ、あ、ア……ッ!」


そのまま力任せに揺さぶれば、開いた口からは甘い悲鳴が圧し出されて響き渡り、繋がった所からは先ほどより数段派手な水音が立った。


「ぅアッ、あっ、おく……奥にィッ」

「奥が、好きだろォが、おらっ」

「ひぐっ! ぅ、ア、ああア!」


水のようになってしまった精液を勢い良く飛ばしながら、かくりと後ろに傾いたリキッドをその流れに任せてベッドへと押し倒す。そして足を大きく開かせると、更に奥を抉るように、何度も何度も責め立てて。


「っ、もう、出ねェか?」

「――ッあ、も、むり、ぃい……!」

「じゃあ別のモンでも、出してみっか」

「いぎッ?!」


達したばかりで敏感になっているリキッドの欲塊の先端を摘み上げたハーレムは、抽送を続けつつそこをグリグリとこね回し始めた。
痛みに跳ね回ろうとするリキッドの肩を抑えつけ、尚も熱を持つほどに擦る。止めさせようと伸ばされた手が時折ハーレムの腕を掠めていくが、最奥を突き上げるたびに力尽きてはシーツの上に落ちる、その繰り返し。


「ひ、あ、たいちょ、たいちょおお! ッ……なンか、クるっ……嫌…こわ…ぃっ!」

「我慢すんな、出せ」

「んあ、ア……やあァア――ッ!」

「く……っ」


瞬間、一際甲高い悲鳴をあげたリキッドの体が思い切り痙攣した。同時にハーレムが掴んでいた欲塊の先端から勢い良く吹き出したのは、精液とはまた違った水のようなもの。粗相をした訳では無い。所謂、潮を吹くという現象だ。

痙攣する内壁に欲を叩き付けながら、男でも出せるものなんだなと妙に感心してそれを眺めていたハーレムだったが、リキッドが意識を飛ばしてしまったことに気付くとガクリと肩を落とした。


「もう一発くれェやらせろよー……っても、聞こえねェか――」





甘い香りが充満する部屋。
さてこのイタズラの後始末をどうするべきか。ハーレムはそれを考えようとしたが、初めに考えるべきことだけは決まっていた。

――リキッドを、何と言って宥めるか。


「……とりあえず抜こ……」


暫く、蜂蜜の匂いは消えそうにない。





【ごちそうさまでした。】

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