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□Recklessly
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もし、
リキッドの目が見えなくなったなら


Recklessly



「たいちょう」


艦の通路で背後から声を掛けられ、驚いた。


「よく、俺だって分かったな」

「んー…何となく?」


リキッドの閉じられた両瞼の下に、もう眼球は無い。


「で、どうした。何か用か」

「ううん。べつに」

「そうか」


任務中の怪我が元で、光を失ったリキッド。
突然に世界が一変した不安からか、やや幼くなってしまった言動にも、もう慣れた。


「あ、」

「ん?」

「本部への報告書。後で、持っていきます」

「おう」


戦場に立つことは出来なくなったけれど。
せめて、そばに居ることを許して欲しい。

あの日、真っ白い病室で。
己が二度と光を取り戻せないことを教えられたリキッドに、取り乱す風でもなく静かに懇願された。

許すも許さないも無い。
いいから、そばに居ろ。

そう告げたハーレムの声こそ、震えていた。


「リキッド」

「はい?」

「来い」


リキッドの方に向かって手を差し伸べる。
気配を探って覚束無い足取りで、それでも確かに真っ直ぐ進んできた体を、そっと腕に抱いた。


「たいちょう?いきなり何すか?」

「べつに」

「あ、まねすんな」

「うるせー」


黙らせるように、その唇を塞いで。

光は失ってしまったけれど。
この、温もりだけはどうか。

なくさぬよう。


(この愛は、多分初めから盲目的なもの)

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