LOG2

□九月の憂鬱
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(お題:彩街様より)





街へひとりで散策に出掛けたはずのリキッドを、大通りからは少し入った路地にある、さびれたカフェのテラスでみつけた。
なけなしの金で買ったのであろうオレンジジュースが、しかし口を付けられた様子も無くポツンとテーブルの上に乗っている。

「何やってんだ、こんなトコで」
声を掛けつつ、サービスで添えられていたらしい小さなクッキーを口に放り込む。

なにすんだよッ

そういう反応を期待していたのだが、溜息を吐かれただけに終わってしまい拍子抜けした。それどころか目も合わせようとしない。
はて艦を出る前はあんなに散策を(つまりは平和で安全な時間を)楽しみにしていたのにと、ハーレムは首を傾げる。
だがややあって気付いた。リキッドが、見ているものに。

リキッドの視線の先にある大通りには、プリントの束を抱えた学生風の若者たちが行き交っていた。
ああ、そういう事か。
入学シーズンのイギリスではたまに見掛ける光景だ。なるほどリキッドは強制的に中断させられた学生生活に思いを馳せ、そして落ち込んでいたらしい。

「大学行ける脳ミソなんざお前にゃ無ェだろが。よしんば入れたとしても、卒業出来ねーんじゃね?」
さすがにこれは慰めの言葉としては適切ではなかったか。
「そりゃ……そうですケド……」
目に見えて落ち込みの度合いを深くしたリキッドに、さてどうしたものやらと内心困り果てる。
ややあって、次に口に出したのは。

「――俺、最終学歴、中卒」
「……へ?」
自分は16歳の義務教育終了と同時に戦場に出た。士官学校にも進んでいない。
だから書類上、最終学歴は中卒なのだ。
「お前と一緒だな」
「一、緒?」

そっか、俺、隊長と一緒かあ――一言一言を
噛みしめるように呟きながら、少しずつ晴れやかになっていくリキッドの顔。
その顔にこちらの顔もつい緩んだ。
「んじゃ、帰っか」
そう言うと、ジュースがもったいないとコップに飛び付いたこどもに、帰りに菓子でも買ってやるかと思ったハーレムであった。

【単純な憂鬱、単純な爽快】

――――――――――

そういや隊長って中卒じゃね?という疑惑

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