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□八月の日溜まり
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(お題:彩街様より)





常夏の南国。まだ午前中だというのに、空気はねっとりと湿気を含んで肌にまとわりついている。
午後に向けてますますその度合いは増してゆくのだろう。考えるだけで頭から湯気が出そうだ。
けれども、そんな中をリキッドがいつものようにくるくると動きながら家事をこなしていく。決して暑さを感じていない訳では無い証拠に、顎からしたたる汗を時折拭っていた。
「あッ」
「なんだよ」
そんなリキッドの背後からそっと近付き、手元にあった作り掛けの料理から肉をほんの一欠片。つまりリキッドの驚いたような声はまあ、このつまみ食いに対する非難の「あ」な訳だが、どこ吹く風で二口目に手を伸ばした。
「つまみ食いは禁止だって前も言ったでしょ、ガキすかアンタ!」
「いーじゃねェか別に。ってかリッちゃん食ってイイ?」
「こんな昼間から寝言言わないでください」
「じゃあ昼間じゃなけりゃオッケーっつーこったな」
「はい? え、あ、は?!」
さて今夜の予約も完了したところで、何とは無しに後ろから抱き締めてやった。
「な、ちょ、」
正直暑い。
腕の中のリキッドも、暑いだの離れろだのピィピィと騒いでいる。ヒヨコ頭の癖にいっちょ前にトサカに来ているらしい。
「――あっちィんだけどな。あったけェ」
「はァ……? なんすかそれ」
「俺もよく分からん。でも多分あれだ、俺、リッちゃんのことすっげー好きだ」
だから、あったけェんだ。
何のためらいも無くすらりと出た言葉に。

リキッドは真っ赤な顔をしてそれ以降黙ってしまったけれど、しばらく経ったテーブルの上には、端から端まで俺の好物で埋め尽くされていた。

【デザートは、言わずもがな】


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