LOG2

□六月の雪
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(お題:彩街様より)





ふわふわと白いものが舞っている。
手を伸ばすがその僅かな動作が風を起こし、掴むこと叶わず白が逃げる。
ふわり、ふわりと。
漂うそれに躍起になるけれども、リキッドはついに白を捕らえられなかった。
「そりゃそうだよなァ」
雪のようなそれは地面に落ちてなお白く。
少しずつ、少しずつ、積もる。そこから離れたくないかのように。
かつて――いや、つい先程まで街であった、この場所から。
「灰になったって」
見上げた空に呟く。
「住んでた、生きてた場所をブッ潰した俺なんかに、触られたくなんかないよな」
「ブッ潰したのは俺サマだろが」

急に、後ろからガツンと殴られて目の前に星が飛んだ。
「――ッてえ! 何すンすか隊長!」
「だァから、ブッ潰したのは俺サマだっつーの。オメーはその辺でチマチマ掃除してただけだろォが。思い上がんなガキが」
何事かと振り向いた先で一息に。けれども初めこそおどけたようだった口調は、刃のように鋭く締めくくられた。
いまいち意味が呑み込めず、頭ひとつ高い所にあるハーレムの顔をポカンと見上げる。
「……オメー……本ッッ当に馬鹿なのな」
「はっ?! え、なに、どーゆーことっすか?」
「解らねェなら、いい」
そう言ったハーレムの、顔。
何故だか困ったような、そんな顔をしていて。

それが彼なりの優しさであったことに、リキッドが気付けたのはもっと、ずっと後になってからのことだった。

【不器用vs鈍感】


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