LOG2

□五月の満月
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(お題:彩街様より)





夜の任務はまだ慣れない。
地図や写真で街の地形は頭に叩き込むけれど、夜の闇はそんな付け焼刃で覚えた景色など、一変させてしまうから。

それでも俺は駆ける。
血の臭いを運ぶ風の中を。
肉の焼け焦げる臭気に満ちた路地を。
無機物、有機物、いろんなものでぐちゃぐちゃになった地面の上を。
走って、走って。

その頭上を、入れ違うようにして青が一筋飛んだと思ったら。
遥か遠くで弾けて轟音、少し遅れて風と熱。
俺は振り返らない。ひたすらに駆ける。
そして月明りに照らされた先には、ようやく辿り着いた、俺のかえる場所。

「おせェ!」

ただいまも言う暇もなく殴られた。
今日は、失敗はしていない。制限時間も守ってる。単純に戻るのが一番遅かった、それだけでこの仕打ち。
でもそうやってひどい目に遭いながらも、俺はのん気に「明日の夜も晴れるといいな」なんて考えていた。
だって隊長の髪が、目が、月の光に映えてすごく、すごくきれいだったんだ。
「ねえ隊長」
「あン?」
「隊長って、キレーですよね」
口にしてから、あ、ヤバいって――思ったんだけど。

もう、2発目のゲンコツが目の前に迫っていた。


【満月に浮かぶ道しるべ】

――――――――――

満月

ルナー・ソサイエティ

月明りが外灯代わり

隊長が道しるべ

という謎発想による。


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